btobマーケティングは一般消費者向けのbtocとはまったく異なる手法が必要とされます。製品やサービスの販売プロセス、顧客の意思決定プロセス、検討期間など、btobならではの特徴をしっかりと理解しなければなりません。
そこで本記事では、btobマーケティングの基本から、効果的な手法、主要な戦略、そして成功事例まで、徹底的に解説します。
btobマーケティングに新たに取り組む方、既存の戦略を改善したい方、または成功事例から学びたい方は必見です。本記事を通して、顧客に合ったbtobマーケティングの方法を掴み取ってください。
BtoBマーケティングとは
BtoBマーケティングとは、企業間取引におけるマーケティング活動のことを指します。製品やサービスを提供する企業が、他の企業に向けて行うマーケティングです。
従来のBtoBビジネスでは、対面での営業活動が中心でした。しかし近年、デジタル化が進み、Webサイトを活用したマーケティングの重要性が高まっています。企業が商品を購入する際、最も参考にする情報源がWebサイトだという調査結果もあります。
Webマーケティングのメリットは、顧客ニーズに合わせた的確な提案やアプローチが可能で、顧客の行動データを収集・分析できることです。収集や分析により、商談から受注に至るプロセスが効率化され、売上げアップにつながります。
そのため、BtoBマーケティングでは、単なる対面営業だけでなく、Webサイトを中心としたデジタルマーケティングが欠かせません。顧客データに基づき、ターゲットを明確に定め、適切なコンテンツやチャネルを選んで顧客にアプローチする。こうした取り組みが成功の鍵となるでしょう。
BtoCマーケティングとの違い
BtoBマーケティングとBtoCマーケティングの違いを3つ紹介します。
- 販売プロセスの違い
- 顧客の意思決定プロセスの違い
- 検討期間の違い
以下で詳しく解説します。
販売プロセスの違い
BtoCマーケティングとの違いの1つめは、販売プロセスの違いです。
BtoB営業では、企業間取引のため、製品やサービスの内容が複雑で高額になる場合が多く、長期的な顧客関係構築が欠かせません。実際の購入までに、詳細な顧客ニーズの把握、複数回の対面商談、サービスのカスタマイズなど、時間と手間がかかるプロセスを踏む必要があります。
このため、BtoBマーケティングでは信頼関係の醸成が何より重要視されます。専門的な知見を交えた教育的コンテンツの提供や、分野に精通したコンサルティング力が求められるのです。
一方のBtoCは、一般消費者が対象です。価格も比較的安価で、感情的な購買行動が見られます。そのため、魅力的なブランドイメージ作りと購入プロセスの簡素化が肝心です。
顧客の意思決定プロセスの違い
BtoCマーケティングとの違いの2つめは、顧客の意思決定プロセスの違いです。
BtoB営業では、企業が事業活動のために商品やサービスを購入するため、意思決定は複雑なプロセスを経ます。通常、複数の関係者が検討に関与し、部門を超えた協議を重ねたうえで、最終的に経営陣が判断を下すのが一般的です。
対してBtoCでは、商品・サービスの購入者と利用者が個人のお客様であり、意思決定のプロセスはシンプルです。個人のニーズや欲求に基づき、比較的スピーディーに購買判断がなされます。高額な商品の場合は検討期間が長くなることもありますが、基本的には簡単で早い意思決定サイクルといえるでしょう。
検討期間の違い
BtoCマーケティングとの違いの3つめは、検討期間の違いです。
BtoBでは、企業の複数の関係者が関与し、社内での検討と承認を経る必要があります。特に案件の規模が大きくなればなるほど、意思決定までに時間がかかります。
一方、BtoCの場合、商品は一般消費者向けで価格も比較的安価なことが多いです。つまり、気に入れば個人の判断で即購入できる商品がほとんどです。
BtoBマーケティングの主な手法5選
BtoBマーケティングの主な手法を5つ紹介します。
- コンテンツマーケティング
- メールマーケティング
- ホワイトペーパー
- WEB広告
- セミナー開催
以下で詳しく解説します。
コンテンツマーケティング
BtoBマーケティングの主な手法の1つめは、コンテンツマーケティングです。
コンテンツマーケティングではブログ記事やウェビナー、オンデマンド配信などを自社で発信していき、ターゲットの関心事にマッチした役立つ情報を届けます。
例えば、業界の最新トレンドや先進的なソリューションについて分かりやすく解説したブログ記事を公開すれば、その領域に携わる企業担当者の興味を引きやすくなるでしょう。専門性の高い情報に魅力を感じてくれた企業は、商談のチャンスにつながる可能性があります。
広告費を抑えられるというメリットもありますが、一方で質の高いコンテンツを継続的に生み出すための専門的ノウハウやリソースが必要になります。
しかし、検索エンジンでの上位表示が見込めるため、新規顧客の掘り起こしにもつながります。ターゲットの本当のニーズを捉えた価値あるコンテンツを発信し続けると、ブランドイメージの向上と優良リードの獲得を実現できる点がコンテンツマーケティングの強みです。
メールマーケティング
BtoBマーケティングの主な手法の2つめは、メールマーケティングです。
ターゲットに合わせて細かくカスタマイズできるため、以下のようなさまざまなシーンで効果的に活用されています。
- リード獲得のためのステップメール配信
- リードナーチャリング(育成)のためのニュースレター発行
- 既存顧客への最新情報やイベント案内のターゲティングメール
- 購買後のフォローアップメール
- 定期的な関係構築を目的としたメールマガジン発行
メールマーケティングでは、オープンレートやクリック数など効果測定が行いやすく、ROI(投資対効果)の高い施策が可能です。業種や企業規模を絞ったターゲティングも実現できるため、BtoBに適した手段といえます。
ホワイトペーパー
BtoBマーケティングの主な手法の3つめは、ホワイトペーパーです。
ホワイトペーパーとは、企業が持つ専門的な知見やノウハウ、調査データなどをまとめた高付加価値な資料のことを指します。
ホワイトペーパーの大きな魅力は、ターゲットの役に立つ実践的な情報を提供できる点です。例えば、業界の動向分析や最新ソリューションの事例紹介、専門家によるアドバイスなどが挙げられます。このようなコンテンツに興味を持った潜在顧客は、ダウンロードの際に連絡先情報を入力します。
つまり、ホワイトペーパーを上手く活用できると、自社のソリューションに関心の高い優良なリードを継続的に獲得できる可能性が高まるのです。個別の営業活動をする前からマーケティングリソースを効率的に活用できるメリットが得られます。
WEB広告
BtoBマーケティングの主な手法の4つめは、WEB広告です。
リスティング広告やディスプレイ広告、SNS広告などの広告メニューを組み合わせ、ターゲットとなる企業へのアプローチが可能です。
Web広告の強みは、業種や職種、企業規模などを細かく指定してターゲティングできる点にあります。個人ユーザーを除外設定するなどして無駄な広告費を抑えつつ、潜在的な見込み企業に効果的にリーチできます。
加えて、BtoBではリードとなった企業の購買検討が長期に及ぶケースが多いため、リターゲティング広告を組み合わせて継続的なフォローアップが肝心です。認知度向上から具体的な見積依頼獲得に至るまで、一貫したマーケティング施策を展開できるのがWeb広告の大きな利点です。
もちろん、クリック率や問い合わせ率など、様々な指標を詳細に測定・検証できるのも重要なポイントです。PDCAサイクルを確実に回しながら、より高い費用対効果を追求できます。
セミナー開催
BtoBマーケティングの主な手法の5つめは、セミナー開催です。
デジタルマーケティングが主流となった現代においても、オフラインでの対面型マーケティングは欠かせません。その代表格が「セミナー開催」です。企業が自社の製品・サービスについて深く理解してもらう絶好の機会となるセミナーには、大きな効果が期待できます。
セミナーの強みは、ターゲットとなる業界や職種に精通した人々が多数集まる点にあります。自社のソリューションに関心の高い潜在顧客が一堂に会するため、質の高いリードを効率的に獲得できる可能性が高まります。
そして、専門分野への深い理解を求める企業関係者にとっては、セミナーはソリューションの実態を具体的に知る絶好の機会になります。製品デモや事例紹介、専門家によるアドバイスなどにより、ニーズへの的確な応答が可能になるでしょう。
BtoBマーケティングの主な戦略3選
BtoBマーケティングの主な戦略を3つ紹介します。
- 顧客理解
- 価値提案の明確化
- 営業と連携したリードジェネレーション
以下で詳しく解説します。
顧客理解
BtoBマーケティングの主な戦略の1つめは、顧客理解です。
BtoBビジネスにおけるマーケティング戦略の根幹は、ターゲットとする企業や業界、そこで活躍する実務者や意思決定者の本当のニーズの把握が、全ての施策の土台となります。
顧客理解が不十分であれば、サービスサイトのコンテンツが的を射間違えたり、想定外の課題が見過ごされたりと、戦略の行き違いが起こります。そうなれば、いくら優れた施策を講じても、満足のいく成果は生み出せません。
そこで以下のポイントが肝心です。
- 顧客のビジネスを理解する:顧客企業の業界、市場環境、競合他社との関係などを綿密に分析します。
- 顧客の課題を把握する:顧客が直面している問題点や改善したい事柄を明確に把握し、解決策を提案します。
- 顧客とのコミュニケーションを重視する:定期的なミーティングやアンケートを通じて、顧客の声を直接聞き、フィードバックを活かします。
こうした地道な取り組みを通して、顧客の実像が見えてくるはずです。そこから得られた深い理解を基に、真のニーズにマッチしたマーケティング施策を打ち立てられるでしょう。
価値提案の明確化
BtoBマーケティングの主な戦略の2つめは、価値提案の明確化です。
BtoBマーケティングにおいて企業顧客はビジネス目的のための投資を行うため、自社にどのようなメリットがあるのかを明確に理解する必要があります。
価値提案を明確化するためには、以下の点に留意しましょう。
- 競合他社との差別化ポイントを分かりやすく提示する:単に製品やサービスの機能面だけでなく、業務プロセスの改善やコスト削減、リスク回避など、顧客企業が得られる具体的なメリットを示す必要があります。
- 価値提案を社内外に分かりやすく発信し続ける:Webコンテンツはもちろん、展示会でのプレゼンテーションやセミナー講演を通じて、自社のソリューションが顧客にとってどれほど有益なのかを積極的にアピールしましょう。
的確な価値提案なくしては、顧客の理解と信頼は得られません。常に顧客目線を忘れずに、価値提案の明確化を徹底することが、成功の大きな鍵なのです。
営業と連携したリードジェネレーション
BtoBマーケティングの主な戦略の3つめは、営業と連携したリードジェネレーションです。
BtoBマーケティングの企業間取引では検討プロセスが長期に及ぶケースが多く、リード獲得からクロージングに至る一連のフェーズを複数部門が関わって推進する必要があります。
そこで肝心なのが、獲得したリードの質を適切に把握し、そのリードがどのように受注につながったかを確認できる体制を整えることです。マーケティングと営業の両部門がお互いの役割を理解し合い、リード情報を共有しながらスムーズにリレーできる連携を整備する必要があります。
実際、両部門で一貫性のあるリード管理ができていれば、リードの質を見極めながら効果的なマーケティング施策を推進できます。一方で連携が不十分だと、営業活動との整合性が取れずに無駄なリード獲得を繰り返し、機会損失につながりかねません。
BtoBマーケティングの流れ
BtoBマーケティングには、5つの流れが存在します。
- 創出(リードジェネレーション)
- 育成(リードナーチャリング)
- 選別(リードクオリフィケーション)
- 商談・受注
- 顧客維持
以下で詳しく解説します。
創出(リードジェネレーション)
BtoBマーケティングの流れの1つめは、創出(リードジェネレーション)です。
リードとは自社の製品やサービスに対して興味関心を持つ見込み客のことを指します。優良なリードを多数確保できれば、その後の商談に結びつく確率も高まります。
リード創出には様々な手法がありますが、大別すると「受動的アプローチ」と「能動的アプローチ」の2つに分類できます。
受動的アプローチとは、SEO対策やWeb広告を駆使して、インターネット上で自社の存在を示し、見込み客に見つけてもらう手法です。一方の能動的アプローチとは、展示会やセミナー、テレアポなどで直接アプローチを行い、自社の製品やサービスをアピールする施策です。
いずれの手法でも重要なのが、ターゲットとなる企業ニーズに合わせた訴求力の高いコンテンツの準備です。Webサイトのコンテンツ改善やリードマグネットの設置、セミナー資料の作成など、戦略的な取り組みが欠かせません。
育成(リードナーチャリング)
BtoBマーケティングの流れの2つめは、育成(リードナーチャリング)です。
BtoBマーケティングでは、製品やサービスの検討期間が長期に渡ることが一般的なため、リードの段階から継続的なフォローアップを行い、自社への興味や関心を高めていく必要があります。
リードナーチャリングでは、一方的な情報発信だけでなく、リードとの双方向コミュニケーションを通して、ニーズを把握し、きめ細かくフォローしていくことが何より大切です。
リードジェネレーションで獲得したリードを逃すことなく、確実に育成・受注獲得へと導いていく。BtoBマーケティングの成否は、この地道な取り組みにかかっているともいえるでしょう。
選別(リードクオリフィケーション)
BtoBマーケティングの流れの3つめは、選別(リードクオリフィケーション)です。
マーケティングの最終目標は売上アップにあります。そのためには、ターゲットとなる顧客を正しく特定し、的確にアプローチすることが何より大切です。リードクオリフィケーションはその要となるプロセスです。
リードクオリフィケーションとは、顧客候補(リード)の中から、実際に購買する可能性が高い”ホットリード”を選り分ける作業を指します。この選別を怠ると、営業リソースの無駄遣いにつながります。
ホットリードを見つけ出す典型的な方法は、スコアリングと呼ばれるものです。顧客の属性や行動パターンなどから、あらかじめ点数基準を設定しておきます。
たとえばWebサイトの閲覧履歴なら3点、資料請求なら5点などと決めておき、顧客ごとに点数を付与していきます。上位のスコアを獲得したリードが、優先的に営業へ回されることになります。
商談・受注
BtoBマーケティングの流れの4つめは、商談・受注です。
顧客候補を丁寧にナーチャリングしながら育ててきた成果が、商談・受注のステップとなります。ここに来て初めて、お金を動かしてもらえるかどうかが分かれ道です。
商談に臨む際のポイントは、これまでリードがたどってきた行動履歴をしっかりと把握していることです。メルマガの開封状況、セミナー参加の有無、サイト滞在時間の長さなど、顧客のエンゲージメント度を分析し、的確に理解しましょう。
そうした積み重ねから、提案に入る前から、リードがどの程度自社の製品・サービスに関心があるかを把握できます。きめ細かな営業アプローチが可能になり、お客様との信頼関係を強化し、受注確度を高められるはずです。
受注率は10~30%程度と言われていますが、単なる平均値に過ぎません。自社の強みや特性を捉え、質の高いリードに確実にアプローチできれば、その数字はさらに上がるはずです。
顧客維持
BtoBマーケティングの流れの5つめは、顧客維持です。
初回の取引が終わった後も、顧客との継続的な関係構築が必要です。顧客維持では、顧客を単なる取引相手から優良顧客に昇格させ、長期的な信頼関係を築くことが求められます。そのためには、顧客のニーズや課題に密着したサポートやアドバイスを提供し、顧客がサービスを継続して利用してもらうことが肝要です。
特に、SaaSやサブスクリプションのビジネスモデルでは、顧客が継続してサービスを利用し続けてもらうよう注意しなければなりません。
顧客維持の鍵としては、解約率の低下だけでなく、カスタマーサクセスの役割も大きな意味を持ちます。カスタマーサクセスは、顧客の不明点や課題に対処するだけでなく、サービスの利用状況を把握し、積極的に支援することで、顧客の満足度とロイヤルティを高めます。
BtoBマーケティングの成功事例
BtoBマーケティングの成功事例を2つ紹介します。
- 富士電機ITソリューション株式会社
- 川崎重工業株式会社
以下で詳しく解説します。
富士電機ITソリューション株式会社
BtoBマーケティングの成功事例の1つめは、富士電機ITソリューション株式会社です。
富士電機ITソリューション株式会社は、情報システムの最適化を手掛ける企業です。初期のウェブマーケティングでは一定の成果を上げていましたが、競合他社の台頭により、問い合わせ数が減少する課題に直面しました。
このジレンマを打開すべく、同社はメディックス社によるサービスサイトのリニューアル提案を受け入れることにしました。従来のサイトは情報過多で使いづらく、ユーザーニーズにマッチしていなかったのです。そこで、ユーザー視点に立ち返ったサイト設計を行うことで、わかりやすく見やすいサイトへと生まれ変わらせました。
当初は社内からの反対意見もありましたが、リニューアルを強行。その結果、着手から3年後には問い合わせ数が約3倍に増えただけでなく、リード獲得の質の向上により、営業活動の効率化にも貢献しました。
川崎重工業株式会社
BtoBマーケティングの成功事例の2つめは、川崎重工業株式会社です。
グローバル企業である川崎重工業は、欧州での事業拡大に向けてウェブマーケティングの強化を図りました。主に油圧機器の販路開拓のため、ヨーロッパ市場をターゲットにSEO対策に注力することにしたのです。
同社は自社グローバルサイトにおける関連キーワードの検索順位向上を最重要課題と位置づけ、ウェブサイトのリニューアルを実施。サイト構造の見直しや最適化、コンテンツの改善など、総合的なSEO施策を展開しました。
リニューアル後は、順位の推移を継続的に分析し、さらなる改善を重ねていきました。そうした地道な取り組みの結果、ターゲットとするキーワードで上位表示が実現したのです。ウェブサイトへの流入が増加するとともに、エンゲージメント指標の改善にも成功しました。
まとめ
今回は、BtoBマーケティングの基本について解説しました。
BtoBマーケティングには、顧客理解、価値提案の明確化、営業との連携が不可欠です。顧客のニーズを理解し、それに適した価値提案で、効果的なリードジェネレーションが可能となります。常に市場や顧客の動向に敏感であり、戦略を最新の情報に基づいて調整することが、BtoBマーケティングの成功につながります。
最後までお読みいただきありがとうございました。