テレワークが当たり前になった今、場所を選ばず業務を続けられる環境づくりは欠かせません。従来の固定電話では対応しきれない、柔軟で効率的なコミュニケーション手段が求められています。
本記事では、クラウドPBX(クラウド電話)と呼ばれるインターネット回線を利用した電話サービスについて、以下を解説します。
テレワークを取り入れている企業や、移動が多い営業スタッフ、セキュリティ対策に頭を悩ませている経営者の方は、この記事を読んでクラウド電話について理解を深め、導入を検討するきっかけになれば幸いです。
クラウドPBXとは?
クラウドPBX(クラウド電話)は、その名の通りクラウドを活用した電話システムです。
従来の電話サービスでは、オフィスにPBX(構内交換機)を設置し、そこから各社員の電話機を物理的に配線で接続する必要がありました。しかしクラウド電話は、クラウド上に仮想のPBXが存在するため、オフィス内に交換機を置く必要がありません。
社員は誰でも、スマホやPCからインターネット経由でクラウド上のPBXにアクセスできます。
導入時も、既存のインターネット回線さえあれば、すぐに利用を開始できます。オフィス移転があっても、クラウドPBXに接続するだけで電話サービスを継続できるのが魅力です。
クラウドPBXのメリット
クラウドPBXのメリットには、以下の3つがあります。
- オフィス外でも受発信可能
- 従業員のPCやスマホを電話機として利用可能
- セキュリティ対策を任せられる
それぞれ詳しく解説します。
オフィス外でも受発信可能
クラウド電話なら場所を選ばず、スマホやPCから気軽に電話をかけられます。
たとえば出張中や外回り営業の最中でも、クラウドPBXにアクセスすれば社内の内線番号で同僚と連絡を取れます。自宅からテレワークしている場合も、会社の代表番号で顧客に電話をかけられるので、プライバシーを守れます。
また、災害や事故で一時的にオフィスが使用できなくなった場合でも、クラウド電話なら業務を停止することなく通話可能です。
在宅勤務者や遠隔地勤務の社員でも手軽に社内の電話システムに参加できます。オフィスと同等の環境でコミュニケーションを取れるため、多様な働き方を組織に取り入れやすくなります。
従業員のPCやスマホを電話機として利用可能
従来の電話システムでは、全社員分の専用電話機を準備する必要がありましたが、クラウド電話は、社員が保有するスマホやPCを電話機として活用できます。
別の電話機を購入する必要がないため、システム導入時の初期費用を抑えられるのです。
BYODを推進する会社にとっては合理的な仕組みですし、予算に余裕がないスタートアップ企業でも気軽に導入可能です。社員一人ひとりの好みに合わせて、スマホやPCを使い分けられるのも魅力です。
セキュリティ対策を任せられる
従来の電話システムでは、セキュリティ対策やメンテナンスを自社で行う必要がありましたが、クラウド電話ならセキュリティ対策や保守作業をベンダー側に任せられます。
クラウドPBXは専門のデータセンターで運用されており、24時間365日の監視体制が整っています。不正アクセスへの防御や障害発生時の迅速な復旧対応などもベンダーに委ねられます。
企業側では設定変更をブラウザ上で行うだけで済むため、ITリソースを集中させる必要がありません。プロの技術者がシステムの安全性と健全性を常に守ってくれるので、安心して業務に専念できます。
クラウドPBXのデメリット
クラウドPBXのデメリットには、以下の3つがあります。
- インターネットがない環境では使用できない
- 使えない番号がある
- ランニングコストがかかる
それぞれ詳しく解説します。
インターネットがない環境では使用できない
クラウド電話は、インターネット回線を介して通話を行うシステムです。
安定したネット環境が必要であり、一時的な回線トラブルやインターネットが使えない環境下では、クラウド電話を利用できなくなってしまいます。
また、インターネット回線の品質も関係します。通信の混雑時や低速環境では、音声品質が劣化する可能性があります。映像や大容量ファイルのやり取りが多い業種では特に、ネット環境の強化が求められるでしょう。
使えない番号がある
クラウド電話では、発信できない電話番号が存在します。
多くのクラウド電話サービスでは、位置情報が特定できないために最寄りの警察署や消防署への接続ができず、緊急通報用の110番(警察)や119番(消防)に発信できません。
またクラウド電話は、時報の117番や故障受付の113番など、いわゆる短縮ダイヤルにも発信できないことが多いです。
発信できない番号があることに留意し、社内で周知徹底しておきましょう。
ランニングコストがかかる
クラウド電話は、毎月の利用料金、つまりランニングコストが発生します。サービスを利用し続ける限り、月額の支払いが欠かせません。
月額料金は使う回線数によって変動します。従業員数が多ければ多いほど、毎月の出費が嵩んでしまうリスクがあります。
長期的な視点に立って、トータルコストをよく検討する必要があるでしょう。
クラウドPBXの選び方はポイント3つ
クラウド電話を選ぶポイントには、以下の3つがあります。
- 必要な機能があるか
- コストが予算内であるか
- 通信品質は安定しているか
それぞれ詳しく解説します。
必要な機能があるか
クラウド電話を導入する際には、必要最低限の電話機能だけでなく、自社の業務に合った様々な機能があるかをチェックしましょう。
例えば、外出先からでも内線通話ができる機能や、携帯電話とスマートフォンの連携が可能かどうかなど、多様な働き方をサポートする機能が備わっているかに注目しましょう。
また、会議録音機能や着信転送、応対品質の自動評価など、それぞれの業種・業態で求められる機能要件は異なります。事前に社内での要望や課題を洗い出し、解決に適した機能を持つクラウド電話サービスをチョイスしましょう。
コストが予算内であるか
クラウド電話の初期費用とランニングコストを含めたトータルコストが、自社の予算内に収まるかをしっかり把握しましょう。
クラウド電話は概して従来の電話システムよりも安価ではあるものの、ベンダーによって料金体系は様々です。安さに惹かれて安易に選んでしまうと、後々の負担が大きくなる可能性もあります。
例えば、導入当初は初期費用が高くても、長期的にはランニングコストが抑えられて結果的にトータルコストが安くなる場合もあり得ます。反対に、当座は安価でも、運用を続けるにつれコストが高止まりし予算オーバーとなるケースもあるかもしれません。
このように、単に安ければ良いという点に留意しましょう。
通信品質は安定しているか
クラウド電話の音がガタついたり、話している最中に通話が切れてしまっては、重要な打合せの場でも大変です。コミュニケーションが滞り、業務に支障が出てしまいます。
そこで導入に先立ち、実際に通話をしてみて品質をよく確かめる必要があります。多くのクラウド電話会社では無料で試用できるサービスがあり、音質や使い勝手を事前に体験できます。
展示会に出向いてデモを見学したり、自社に貸し出しのデモ機を借りて試してみるのも良いでしょう。社内の環境で問題なく利用できるかを、しっかりと確認しましょう。
クラウドPBXおすすめ5選!比較表
おすすめのクラウドPBXを5つ紹介します。
サービス名 | Zoom Phone | TramOneCloud | Good Line | ConnecTalk | MOTTEL |
提供元 | Zoomビデオコミュニケーションズ | トラムシステム株式会社 | 株式会社グッドリレーションズ | ソフトバンク株式会社 | 株式会社バルテック |
費用 | プロ:1,080円/月 日本の無制限通話:2,020円/月 GLOBAL SELECT:2,688円/月 |
Essentialプラン:1,200円/月 Professionalプラン:1,500円円/月 Enterpriseプラン:2,500円/月 |
SOHOプラン(2内線):初期費用20,000円 月額3,000円 通常プラン:(3内線~):初期費用10,000円 月額基本料5,000円+1,000円 |
基本:10,000円/契約 モバイルタイプ:900円/月/モバイル回線 PBXタイプ:500円/月/ID 外線GW接続:400円/月/ch 宅内PBX接続:400円/月/ch |
スタンダード:初期費用 29,800円 月額4,980円 ミドル:初期費用 39,800円 月額8,500円 プレミアム:初期費用 89,700円 38,000円 プラチナ:初期費用 149,500円 95,000円 |
機能 | フリーダイヤル番号 内線番号 ボイスメール 自動応答/IVR無制限 名前によるダイヤルディレクトリ 自動応答(IVR)機能 バージ/モニター/ささやき/引き継ぎ 休日/平日の営業時間のルーティング 3ウェイアドホック会議通話 通話記録 指定の通話ブロック 緊急時の通話 緊急対応センターHelp Tooltip icon 共有回線外観/委任 デバイス間のハンドオフの呼び出し コールパーク チャット など |
スマホアプリ IVR 全通話録音 従来PBX機能 コールセンター連携 プレゼンス 発番号/着番号識別 会議通話 IP多機能電話機 など |
通話録音機能 全通話履歴参照 発着信分析 稼働状況通知・モニタリング など |
内線通話 固定電話番号通知 保留転送 ピックアップ 着信グループ 自動転送 マルチライン スケジュール転送 スマートフォンアプリ PHONE APPLI PEOPLE連携 他アプリ発信転送連携 など |
スマホ内線化 ソフトフォン インターネットFAX チャット 電話帳 顧客情報の表示 内線管理・人事管理 WEB設定変更 複数店舗の接続 など |
それぞれ詳しく解説します。
Zoom Phone
引用元:Zoom Phone
提供元 | Zoomビデオコミュニケーションズ |
費用 | プロ:1,080円/月 日本の無制限通話:2,020円/月 GLOBAL SELECT:2,688円/月 |
機能 | フリーダイヤル番号 内線番号 ボイスメール 自動応答/IVR無制限 名前によるダイヤルディレクトリ 自動応答(IVR)機能 バージ/モニター/ささやき/引き継ぎ 休日/平日の営業時間のルーティング 3ウェイアドホック会議通話 通話記録 指定の通話ブロック 緊急時の通話 緊急対応センターHelp Tooltip icon 共有回線外観/委任 デバイス間のハンドオフの呼び出し コールパーク チャット など |
Zoom Phoneは、Zoomのビデオ会議システムと連携しているため、テレワーク環境下でもスムーズなコミュニケーションが可能です。インターネット回線さえあれば、自宅やカフェ、外出先から気軽に社内の内線番号で発着信できます。
操作性の面でも定評があり、Zoomのインターフェースになれている人なら直感的に使えるでしょう。通話中に簡単にビデオ会議に切り替えられるなど、場面に合わせた柔軟な運用が可能です。
TramOneCloud
引用元:TramOneCloud
提供元 | トラムシステム株式会社 |
費用 | Essentialプラン:1,200円/月 Professionalプラン:1,500円円/月 Enterpriseプラン:2,500円/月 |
機能 | スマホアプリ IVR 全通話録音 従来PBX機能 コールセンター連携 プレゼンス 発番号/着番号識別 会議通話 IP多機能電話機 など |
TramOneCloudは、オフィスの規模に合わせてシステムの容量を自在に調整できます。中小企業でも過剰なコストをかけずに導入可能です。一方、ビジネスの成長に合わせて容量を増やすこともできるため、大手企業でも安心して利用できます。
AWSクラウドを採用しているため、99.95%の高い可用性を実現。万が一のトラブルにも瞬時に対応してくれます。セキュリティ面でも安全性が高く、外部からの不正アクセスを徹底的にブロックします。
Good Line
引用元:Good Line
提供元 | 株式会社グッドリレーションズ |
費用 | SOHOプラン(2内線):初期費用20,000円 月額3,000円 通常プラン:(3内線~):初期費用10,000円 月額基本料5,000円+1,000円 |
機能 | 通話録音機能 全通話履歴参照 発着信分析 稼働状況通知・モニタリング など |
Good Lineは、テレワーク環境下でも社内の内線番号を使えます。外出先や自宅からでもスマホやPCで気軽に社内の内線に発信・着信でき、録音機能やクラウド電話帳、通話状況のモニタリング機能なども充実しています。
低コストでありながら機能が充実しており、テレワークを導入しコミュニケーション環境を強化したい企業には、ぜひおすすめしたいクラウド電話サービスです。
ConnecTalk
引用元:ConnecTalk
提供元 | ソフトバンク株式会社 |
費用 | 基本:10,000円/契約 モバイルタイプ:900円/月/モバイル回線 PBXタイプ:500円/月/ID 外線GW接続:400円/月/ch 宅内PBX接続:400円/月/ch |
機能 | 内線通話 固定電話番号通知 保留転送 ピックアップ 着信グループ 自動転送 マルチライン スケジュール転送 スマートフォンアプリ PHONE APPLI PEOPLE連携 他アプリ発信転送連携 など |
ConnecTalkでは、VoLTEによる高音質な通話が実現できます。スマートフォンの標準機能を利用するため、音質の劣化を心配する必要がありません。重要な商談でも快適なコミュニケーションが取れます。
初期費用を大幅に抑えられる点も魅力的です。部署単位で導入を始め、ビジネスの拡大に合わせて段階的に内線数を増やせます。
MOTTEL
引用元:MOT/TEL
提供元 | 株式会社バルテック |
費用 | スタンダード:初期費用 29,800円 月額4,980円 ミドル:初期費用 39,800円 月額8,500円 プレミアム:初期費用 89,700円 38,000円 プラチナ:初期費用 149,500円 95,000円 |
機能 | スマホ内線化 ソフトフォン インターネットFAX チャット 電話帳 顧客情報の表示 内線管理・人事管理 WEB設定変更 複数店舗の接続 など |
MOTTELは、全国の市外局番を利用可能なため、地域による制約なく、自由に電話番号を選択できます。
利用規模に応じた明快な料金体系が用意されており、中小企業から大規模企業まで、ニーズに合わせて選択できる点が魅力です。
機能面でも、専用チャットやCTIなどが標準搭載されており、機能は無料で利用できます。
まとめ
今回は、クラウド電話について解説しました。
クラウド電話は、テレワークや移動が多い営業スタッフ、セキュリティ対策に悩む経営者にとって、場所を選ばずに業務を行うのに適したシステムです。
メリットとして、オフィス外でも受発信が可能であり、従業員のPCやスマホを電話機として利用でき、セキュリティ対策も外部ベンダーに任せられるという点が挙げられます。ただし、インターネットがない環境では使用できない、特定の番号に発信できない、そしてランニングコストがかかるといった注意点もあります。
クラウド電話を導入する際には、自社のニーズに合った機能が備わっているか、予算内であるか、通信品質が安定しているかを検討し、記事の情報を参考に、柔軟で効率的なコミュニケーションを実現するためのクラウド電話システムの導入をご検討ください。