2024.06.26

アップセルとクロスセルの違いや意味は?活用ポイントや成功事例までを解説

アップセルとクロスセルは、自社の顧客単価や収益アップに重要な営業手法です。昔からあったやり方ですが、ITを活用した営業方法が拡がった昨今、再び注目を集めています。

ただ、言葉は知っているけれど、違いや意味をいまいち理解できていない人や、活用するための具体的な方法が知りたい人もいるでしょう。

今回はアップセルとクロスセルについて以下を解説します。

この記事でアップセルとクロスセルへの理解を深め、自社の売上アップに繋げていきましょう。

アップセルとクロスセルの違いとは


まずは、アップセルとクロスセルの違いを知るために、それぞれの意味を解説します。

アップセルとは

アップセルとは、現在顧客が利用している商品、または購入を検討している商品より上位モデルを提案し成約に結びつける営業手法です。

英語で書くとUp sellで、アップセリング(Up selling)とも呼ばれます。

例えば、パソコンの買い替え時に今まで使っていたものよりグレードアップしたパソコンを提案するなどです。

アップセルと反対の手法として、ダウンセル(Down-sell)があります。ダウンセルとは、顧客が検討中の商品を予算に合わないなどで見送ろうとした際、当初より価格が安い商品を提案して成約に結びつける営業手法です。

クロスセルとは

クロスセルとは、顧客が購入を検討している商品と一緒に、別の関連商品を提案し成約に結びつける営業手法です。

英語で書くと、Cross sellで、クロスセリング(Cross selling)とも呼ばれます。クロスには交差する、組むという意味があります。

例えば、ノートパソコンの購入を決めた顧客へ画面シートやカバー、パソコンバックを一緒に提案するなどです。

アップセルとクロスセルは、顧客単価をあげる目的は同じですが、その方法に違いがあります。

アップセルとクロスセルはなぜ重要か


アップセルとクロスセルが重要な理由は以下の通りです。

  • 売上アップにつながる
  • 顧客満足度のアップにつながる
  • 機会損失を回避できる

それぞれを詳しく解説します。

売上アップにつながる

アップセルで上位モデルを購入してもらうことや、クロスセルで関連商品を追加購入してもらうことで、自社の売上アップにつながります。つまり、顧客単価のアップです。

新規顧客を見つけるコストをカットでき、効率的に売り上げを伸ばせます

また、どの上位モデルやどの関連商品を選ぶかで顧客ニーズを知れるため、今後の売上アップの戦略を立てるのに有効です。

顧客満足度のアップにつながる

アップセルとクロスセルを適切に行うことで、顧客の満足度がアップします。

例えば、顧客がこれまで使っていた商品の一部に不便さを感じていたとしましょう。それでも総合的に気に入っていたため同じ商品を購入しようとした時、不便さを解消する上位モデルを提案してもらうことで、より良い商品を手にできます。

また、合わせて利用することで、さらに便利になる商品を提案してもらう場合にも同じく顧客満足度は上がります。

顧客満足度のアップは、顧客と自社の信頼関係を築き、固定客獲得や口コミによるブランドイメージの向上につながるでしょう。最終的に売上アップにもつながる重要なプロセスです。

機会損失を回避できる

アップセルやクロスセルは、機会損失の回避にもつながります。

例えば、10万円と15万円の商品があり、顧客は10万円の商品しか認知していなかったとします。

アップセルを活用し、メリットの高い上位モデルとして15万円の商品を提案できれば、顧客が気に入って15万円の商品を購入するかもしれません。

しかし、何もしなかった場合、10万円の商品を買う可能性しかありません。つまり、15万円の商品を購入してもらう機会を損失しているのです。

機会損失は、売り上げが減少する訳ではないため気づきにくいですが、何度も重なると自社の成長を妨げる重大な問題につながります。

アップセルやクロスセルを用いて顧客のニーズを掴み、最大限の売上獲得を目指しましょう。

アップセルとクロスセルを活用するためのポイント


アップセルとクロスセルを活用するには、以下のポイントがあります。

  • 顧客データからターゲットやニーズを分析
  • 顧客視点から提案方法を考える
  • 最適なタイミングの検討

それぞれを詳しく解説します。

顧客データからターゲットやニーズを分析

アップセルとクロスセルはやみくもに行っても、かえって顧客の反感を買うだけです。そのため、まずは顧客データから商品のターゲットやニーズを分析しましょう。

例えば、BtoB商品なら顧客が商品購入の決定権がある役職なのか、BtoC商品なら顧客の家族構成やこれまでの購入履歴などを確認します。そして、どの商品のターゲットになり得るか、ニーズはどこにあるかを分析します。

商品にどのくらい興味を持っているかで、ターゲットに優先順位をつけておくと、さらに効率的です。

顧客視点から提案方法を考える

顧客視点から提案方法を考えるのも大切です。

アップセルとクロスセルはやり方によって、押し売り感が出てマイナスになる場合もあります。顧客が必要としていない上位モデルを提案したり、不要な商品を何度も提案したりすると、顧客は不快な気持ちになり、自社への信頼度が下がりかねません。

ニーズのある商品を顧客視点のメリットとともに伝えれば、購入意欲がわき、信頼関係を構築できるでしょう。

例えば、縦型洗濯機を検討中の顧客に「楽に洗濯を済ませたい」というニーズがあれば、「干さずに済む」メリットがあるドラム式洗濯機を提案します。また、縦型洗濯機にこだわりがあれば、縦型洗濯機と「干さずに済む」メリットがある乾燥機を一緒に提案します。

加えて、コスパやタイパも説明できれば、より顧客の興味を引くでしょう。

最適なタイミングの検討

アップセルとクロスセルは提案するタイミングも重要です。

基本的に、アップセルはいずれかの商品を購入すると意思が固まった時、クロスセルは購入する商品が決定した直後がおすすめです。それは、購入意思がある=顧客が自社をある程度信頼していると考えられるからです。

逆に、購入するか決まってもいないのにアップセルをしたり、商品が決まる前にクロスセルをしたりすると、信頼関係が薄いため、押し売りに見えやすくなります。

また、アップセルとクロスセルの最適なタイミングはサービス提供の仕様や商品によって異なります

例えば、クラウドサービスの場合は、無料お試し期間が終了する時、または無料範囲を超えるタイミングに提案すると効果的です。

このように仕様や商品に応じて、最適なタイミングを分析すると、アップセルとクロスセルがより有効に活用できます。

アップセルとクロスセルの具体的な活用例


ここからは、アップセルとクロスセルの具体的な活用例をそれぞれ解説します。

アップセルの活用例

アップセルの活用例としては以下のような場面が考えられます。

  • 商品の上位モデルを提案する
  • 無料お試し会員から有料会員を提案する
  • 限定プレゼントを提示し、ハイグレードなプランに入るように促す
  • まとめ買いをすると商品が安くなる
  • 長期契約するとサービスの月額料金が安くなる

商品の上位モデルを提案するのはアップセルの基本ですが、それ以外にも複数の活用例があるのが特徴です。

例えば、サブスクリプションサービスでは、無料のお試し会員として入会してもらった後、お試し終了時に有料会員になるよう提案しています。

また、芸能人のファンクラブなどは、会員のグレードに応じて限定のプレゼントを提供し、より会員費が高いプランに入るように促しています。限定プレゼントに付加価値をつけて、ファンからの魅力をアップしているのです。

さらに、まとめ買いをすると安くなる商品や長期契約すると月額料金が安くなるサービスは、顧客にとってのメリットを示しつつ、高い商品やサービスを選ぶように促しています。

クロスセルの活用例

商品購入時に合わせて別の商品を提案するクロスセルは、さまざまな場所で活用されています。

例えば、以下の場所です。

  • 飲食店
  • ネットショップ
  • 携帯ショップ
  • 不動産 など

飲食店で行われるクロスセルは、セットメニューです。牛丼とセットに豚汁を頼むと割安になることをアピールし、客単価を上げています。1人1人をみると少額ですが、複数人になると大きな売り上げです。

ネットショップでは、商品購入後に関連商品を提案する、「あと〇〇円で送料無料」と文字を表示するなどし、追加で商品を購入するように促しています。

また、携帯ショップでは、スマホの使用プランと共に有料動画がお得に視聴できるサービスを追加オプションとして提供しています。新規契約時は新しいことに興味が湧くため、さりげなく提案するのがポイントです。

さらに、不動産でも建売の新築物件を購入すると、お風呂やキッチンのグレードアップ、カーポートやテレビアンテナの設置工事など、オプションを提示しています。

これらのように「ついで買い」を促し、自社の売上アップにつなげるのです。

アップセルとクロスセルの成功事例


アップセルとクロスセルは、多くの企業で取り入れられており、さまざまな成功事例が上がっています

特に、有名なアップセルとクロスセルの成功事例は以下です。

  • Amazon
  • ChatWork

それぞれを詳しくご紹介します。

ChatWork

引用元:ChatWork

アップセルの成功事例は、ビジネスチャットツールのChatWorkです。

2023年に行われた調査によると、日本のビジネスチャットツールの中で、ChatWorkの利用者数が最も多いことがわかりました。この記録は5年連続で、今後も増え続けることが予想できるでしょう。
(参考:「ビジネスチャットツール調査」PRTIMES

ChatWorkは無料のフリープランと月額700円のビジネスプラン、月額1,200円のエンタープライズプランに分かれており、上位になるほど活用できるサービスが増えます。

フリープランでもチャットのやり取りは可能ですが、ストレージの制限やメッセージの閲覧が期間限定、ビデオチャットの人数が限られるなど、有料に移行する方がメリットが多くなります。

フリープラン時に、有料プランになるよう促すテロップが表示されるため、メリットに惹かれてそのまま有料会員になる導線ができているのもポイントです。

このように、無料プランでサービスの魅力を感じさせ、上位プランへ移行させるアップセルの営業手法が活用されています。

Amazon

引用元:Amazon

クロスセルの成功事例は、世界で最も利用されているECサイトのAmazonです。もちろん、日本のECサイト利用者数もAmazonがNo.1です。

Amazonでは、商品ページに「一緒に購入」「他のお客様がよく閲覧している商品」「こちらもおすすめ」などの文字と共に、関連商品が表示されます。

購入直前には、これまでに購入したことのある消耗品が「もう一度買う」の文字と共に表示され、再購入を促されます。

これらはクロスセルの営業手法です。

Amazonは膨大な顧客情報をデータ化し、購入履歴や閲覧履歴、関連商品まで細かい分析の元、おすすめ表示を行っています。そのため、顧客にとっても買い忘れが防げる、類似商品との比較ができるなど、メリットが高いのが特徴です。

顧客と販売店、それぞれがWin-Winな関係のため、利用者の増加につながっています。

まとめ

本記事では、アップセルとクロスセルについて、意味や活用ポイントなどを解説しました。

アップセルとクロスセルはそれぞれに以下の意味があります。

  • アップセル…顧客が検討している商品より上位モデルを提案する営業手法
  • クロスセル…顧客が検討している商品と一緒に別の関連商品を提案する営業手法

どちらも売上アップが目的ですが、そのやり方が違います。

アップセルとクロスセルは売上アップだけでなく、顧客満足度アップや、機会損失の回避にもつながるため、営業する上では無視できない重要なテクニックです。

以下のポイントをおさえれば、有効に活用できます。

  • 顧客データからターゲットやニーズを分析
  • 顧客視点から提案方法を考える
  • 最適なタイミングの検討

もうすでにさまざまな企業で活用されているため、活用例や成功事例を参考に自社での売上アップを目指しましょう。