近年の採用市場は、採用手段の多様化、少子高齢化によるマンパワー不足、中小企業を中心とした売り手市場などさまざまな変化を迎えています。その変化の中で注目されるようになったのが、採用代行サービスです。
採用代行サービスを検討する企業は増えていますが、「導入する具体的なメリットは?」「本当に高い費用対効果が見込めるのか」と疑問に思う人は少なくありません。
本記事では、採用代行サービスを利用するメリット・デメリット、失敗しないためのポイントについて解説します。
採用代行サービスのおすすめを比較した記事もありますので、ぜひご覧ください。
京都大学卒業後、株式会社リンクアンドモチベーションにて大企業を中心とした採用戦略の策定/実行に従事。現在はサクルートにて様々な企業のダイレクトリクルーティングを支援。
採用代行サービス(RPO)とは?業務内容や相場
まずは採用代行サービスの意味や業務内容について、その他の業務内容が類似した業種と比較しながら紹介します。
採用代行サービスの基本的な意味や業務内容を知ることで、メリット・デメリットについても理解しやすくなるでしょう。本記事では、採用代行の意味、業務内容、相場の3つの視点から基本的な情報をまとめました。
採用代行は採用業務を外部委託すること
採用代行とは、採用活動に関する業務を外部委託し社内の採用業務を減らすことを指します。自社の弱みや採用課題であるフェーズを委託することで、問題を克服・解決する手立てにもなるでしょう。
採用代行はRPO(Recruitment Process Outsourcing)とも呼び、海外でも積極的に導入されている手段です。
一部の業務を委託したり、採用戦略から内定者フォローまで全ての業務を委託したりすることができます。採用代行サービスにより対応可能な業務が変わるため、各サービスの詳細を必ず確認しましょう。
採用代行が注目されている背景
現代の日本では、少子高齢化によるマンパワー不足、中小企業を中心に売り手市場に変化、採用手段の多様化、企業ブランディングの必要性が高まるなど採用市場に大きな変化が訪れています。
そのため人事の採用担当が抱える業務量が増加し、機会損失を経験する企業も少なくありません。外部委託に注目する企業が増加傾向にあるといえるでしょう。
採用代行サービスの主な業務内容
採用代行の主なサービス内容を、以下にまとめました。採用戦略の立案から内定者フォロー・新人研修まで行っているサービスもあれば、特定のフェーズに特化したフォローを提供しているサービスもあります。
- 採用戦略の立案
- 人材採用における現状と課題の把握
- 採用管理システムの導入・選定
- 採用目標に向けた採用の計画の立案
- 母集団形成のサポート
- 利用する媒体の候補を選定
- スカウトメールの作成
- 求人の作成
- スカウトメールやDMの送信
- 配信
- 候補者対応
- 応募者への返信対応
- 面接辞退率を下げる対策
- 面接日の調整・面接
- 面接日の調整
- 面接評価シートの作成
- 書類選考の支援等
- 内定者フォロー
- 内定者とのコミュニケーションツール運用
- 内定者参加可能なイベントなどの提案
- 研修
- その他
- 面接代行
- 説明会代行
- 雑務
- 入社研修
さらに詳細に業務内容を知りたいと考えている方は、以下の記事も併せて見て参考にしてください。「人材派遣」「人材紹介」との違いなど、採用代行サービスについてさらに深く言及しています。
採用代行サービスの相場
採用代行サービスの相場は、以下の一覧のとおりです。
【雇用形態の相場】
雇用形態 | 費用 | |
アルバイト | 1~30万円/月 | |
パート | 1~30万円/月 | |
正社員 | 新卒採用 | 5~70万円/月 |
中途採用 | 10~70万円/月 |
【業務内容の相場】
コア業務 | 15~100万円/月 ※業務1件(回)あたり5万程度~ |
ノンコア業務 | 5~70万円/月 ※業務1件(回)あたり2万程度~ |
【料金システムごとの相場】
採用代行の 料金システム | 特徴 |
従量課金型 | コア業務:5万円/件~ ノンコア業務2万円/件~ |
一律課金型 | 業務一部:10万円/月~ 業務全般:45~70万円/月~ |
成功(成果)報酬型 | 採用者の年収20~30%程度 |
採用代行サービスの相場を、上の表にまとめました。
採用代行サービスに依頼する業務量、業務内容、雇用形態、料金システムによって大きく異なるものです。採用代行サービスを検討する際は、最低でも3社に見積もりを依頼し社内で検討しましょう。
採用代行サービス(RPO)を利用するメリット5つ
採用代行サービスを利用するメリットを5つ紹介します。
採用代行サービスは採用担当者がコア業務に専念するなど自社の採用業務を軽減できる以外にも、自社の弱みをカバーしたり採用課題を解決したりする手立てになる可能性があります。
自社の採用担当者がコア業務に専念する時間を捻出できる
採用手段の多様化や企業ブランディングの必要性が高まっていることから、採用担当者の業務量が過多になるケースは少なくありません。
また少子高齢化によるマンパワー不足により、応募者が集まりにくくなっています。そういった理由により、「なるべく多くの応募者を集めよう」と自社とのマッチ度が低い応募者もとりあえず集めている企業もあるでしょう。
採用担当者の業務量が過多になると、コア業務に集中できず質の高い採用が期待できません。また残業が続くと、労働の質が低下したり、モチベーションが下がったりします。ノンコア業務の工数だけでも外部委託できれば、残業抑制ができ、業務の効率化、モチベーション向上、採用の質の向上が期待できます。
プロならではの高いクオリティの採用が期待できる
採用代行サービスを提供している実績のある企業は、あらゆる業界・業種・企業規模などの採用ノウハウを持っています。採用ノウハウを活かし業務を遂行してくれるため、質の高い採用が期待できるでしょう。
また効果レポートの受け取りや定期的なミーティングを行い密に連絡を取り合うことで、専門家の知識・ノウハウを自社に蓄積できるかもしれません。自社の弱みや採用課題を克服・解決するチャンスになります。
将来的に自社のみで採用を実施したいと考えている人にも、採用代行サービスの利用はおすすめです。
採用担当者を雇うコストよりも安く抑えられる可能性がある
採用担当者を雇うコストよりも、採用代行に依頼したほうがコストを抑えられる可能性があります。
また採用の時期だけ採用代行を依頼するなど、フレキシブルな依頼ができるのも採用代行ならではのメリットです。もし成果が得られなくても、雇用ではないため少ない負担ですぐに人員を変えられるのもメリットとして大きいです。
まずは短い期間で採用代行を依頼し、成果が良ければ継続して依頼することもできます。
複数の求人媒体や人材紹介とのやり取りを管理してもらえる
応募者対応が遅れると面接辞退率が高くなるため迅速な対応が求められますが、複数の求人広告や媒体を利用していると即時対応が難しいです。応募者対応を採用代行に応募者対応を依頼することで、採用業務にかかる時間を大幅に削減できるでしょう。
また、即時対応をしてもらえるため、選考の辞退率を抑えられます。
SNS採用、複数の人気求人媒体の利用、ダイレクトリクルーティングなど、現代の採用は手法が多様化しています。そのため採用担当者はあらゆるサービスを確認し、応じなければいけません。
この部分を外部委託することで、採用の質を上げられるでしょう。
内定後フォロー委託で内定辞退率や早期離職率の低下が期待できる
内定後フォローを委託することで、内定辞退率や早期離職率が下げられることが期待できます。
内定者同士のコミュニケーション量、内定者と社員とのコミュニケーション量、入社前研修や課題の量などに悩む企業は少なくありません。
それぞれの最適な密度が分からず内定辞退率の高さに悩んでいる企業の場合、内定後フォローに特化したサービスを選ぶことで内定辞退率を下げられるでしょう。
採用代行サービス(RPO)を利用するデメリット5つ
採用代行サービスを利用するうえでのデメリット・注意点を5つ紹介します。
結論として、採用代行サービスを利用する際は自社に合ったサービスを選ばなければ効果の最大化が期待できません。詳細を見ていきましょう。
応募者や内定者との関わりが薄くなる可能性がある
採用代行サービス全般に懸念されるデメリットが、応募者・内定者との関わりが薄くなることです。
応募者と実際に関わる合否連絡、電話・メール対応、トラブル対応などを採用代行に任せると応募者との関わりが薄くなり信頼関係を構築できません。関わりが薄すぎると、面接辞退・内定辞退につながりやすいです。
自社の魅力をアプローチしたり、応募者・内定者のモチベーションを上げる工夫が必要です。
応募者・内定者との関わりが薄くならないよう注意したり、自社と求職者を繋げてくれる内定者フォローを行ってくれるサービスを選んだりしましょう。
採用代行担当者と認識のすれ違いが発生すると望んだ採用ができない
採用代行の担当者と打ち合わせをする際に、自社の採用課題や採用目標、採用したい人材の条件を確実に説明し理解してもらわなければ理想の採用ができません。
打ち合わせの方法が文面だけだったり、ミーティングの数が少なかったりする場合は注意が必要です。
こまめに進捗を確認するなど、すれ違いが起こらないようにすり合わせましょう。
採用代行担当者とコミュニケーションを取る時間が増える
すれ違いが発生しないためにも、採用代行担当者とのコミュニケーションの時間を増やす必要がでてきます。
採用代行担当者とのミーティングの数、頻度、時間をあらかじめ確認し、日程やスケジュールの管理を徹底しておきましょう。コミュニケーションは少ないよりも多い方が良いですが、多すぎるとコア業務に専念できません。
すれ違いが発生しない程度に、こまめに相談や進捗確認をしてください。効果レポートなどを定期的に提出してくれる採用代行を利用すると、結果を把握しやすいです。
採用代行サービス利用後に費用が高く感じる可能性がある
採用代行サービスを実際に利用した後に、費用が高く感じる可能性があります。採用代行サービスにより特徴があるのはもちろん、同じサービス内でも担当によって得手不得手があるためです。
必ずしも、「採用代行サービス(RPO)を利用するメリット5つ」で紹介したような良い結果が得られないことは覚えておきましょう。
採用代行サービスを利用した後は、利用した際の費用対効果をよく検討する必要があります。PDCAサイクルを回して、自社に合わせて適切なサービスを見つけなければいけません。
自社に合った採用代行を慎重に選ぶ必要がある
採用代行サービスとひとことでいっても、それぞれのサービスごとに特徴があります。採用代行サービス全般に対応しているもの、一部フェーズに特化したもの、完全代行、支援特化、採用コンサルティングなど種類は豊富にあります。
自社に合った採用代行の選び方については、次のパートに詳しくまとめました。
採用代行サービス(RPO)を選ぶ流れとポイント
次は採用代行サービスを選ぶフローとポイントについて、5つのフェーズに分けて紹介します。
実際に採用代行サービスの導入を考えている企業の参考になるよう、ポイントもまとめました。詳細を見ていきましょう。
自社の採用課題を洗い出し依頼する業務範囲を絞る
自社の採用課題を洗い出し、依頼する業務範囲を絞りましょう。依頼する業務範囲を明確化しておかなければ、採用代行に見積もり依頼をした際に無駄な費用が生じる可能性が高まります。
採用代行担当者の営業により、「確かに依頼した方が良いかも」と本来は依頼しなくても良い作業も委託するかもしれません。
より高い費用対効果を出すためにも、自社の採用課題・採用目標・今の状況についてはよく理解しておきましょう。
採用課題の洗い出しの仕方、よくある採用課題について知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
採用代行サービスの実績を自社の業界・業種基準で確認する
依頼したい業務範囲が明確化できたら、次は自社の業界・業種に強い採用代行サービスを検討しましょう。
コア業務にかかる業務の委託をしたい場合は、特に自社の業界・業種に強い採用代行を利用することがおすすめです。逆に応募者と直接関わらない雑務やノンコア業務を依頼する場合は、あまり気にしなくても構いません。
採用代行サービスの公式サイトに実績や事例が掲載されている場合は、必ず確認してください。
全ての業種に対応したサービスでも、実績や事例があるのであれば確認しておきましょう。
複数社に見積依頼をして高い費用対効果が見込めるかを確認する
自社の依頼したい業務範囲をカバーしているかつ、実績のある企業を最低でも3社ピックアップして見積もり依頼を行います。それらの見積もりをもとに、高い費用対効果が見込めるサービス、信頼度の高いサービスを見極めていきましょう。
費用対効果が高くても、担当者に信頼が置けない場合は保留することがおすすめです。なぜなら採用代行において、担当者との相性も考慮すべき項目であるから。
担当者との相性が悪かったり、連絡などが遅かったり返事が曖昧だったりする信頼できない担当者の場合は今後の業務に支障を及ぼす可能性があります。
なお予算よりも高い場合は、予算を再度検討するか、予算内に収まるよう依頼する業務を削りましょう。
業務範囲ごとの責任の所在を明らかにする
依頼する業務範囲・業務内容と、各業務の責任の所在を明らかにしておくことで予期せぬトラブルを防げます。曖昧な部分を残したまま契約を行うと、予期せぬトラブルが生じて採用目標の実現に支障を来す可能性が高まるでしょう。
特に、個人情報の取り扱いには細心の注意を払ってください。情報の取り扱い、管理についてはしっかりと決定することがおすすめです。
また業務を行う上で非常に重要な、採用の根幹ともいえる選考で使う評価シートの共有などは丁寧に行いましょう。
定期的なミーティングや効果レポートの提出があるか
定期的なミーティングや効果レポートの提出があるかは、チェックしておくことがおすすめです。
採用代行サービスによっては、社内報告にそのまま使用できる効果レポートの提出を行うものもあります。それらのサービスを利用することで、社内用資料の作成時間の大幅な削減に役立ちます。
定期的なミーティングに関しては、対面もしくは画面共有機能つきのビデオ通話で行えるのが望ましいです。
メールやチャットなどの文章のみ、電話のみだと勘違いが生じる可能性が高まるため、事前に手段については確認しておきましょう。
採用代行サービス(RPO)導入の例3つ
最後は採用代行サービスの導入事例について、3つ紹介します。
高難度採用に成功!導入後返信率は2倍|サクルート
引用:サクルート公式HP
会社名(事例提供) | 株式会社シュアーイノベーション 業種:不動産 |
採用代行サービス名 | サクルート公式HP |
課題・成功事例 | 導入後の返信率は約2倍!採用難度の高いポジションの採用も成功 |
スカウトメールに関するトップレベルのノウハウを活用し、ダイレクトリクルーティングを成功させている採用代行サービス・サクルート。
高難度といわれている採用ポジションにおいては、導入後の返信率が導入前の約2倍に増加した事例があります。エンジニア・セールスなどの職種の採用にも成功しています。
ダイレクトリクルーティングや、スカウトメールの返信率・開封率に悩んでいるならチェックしてみましょう。
\コア業務に集中して優秀な人材採用を加速させる/
管理職の採用に成功|ビズリーチ
引用:ビズリーチ公式HP
会社名(事例提供) | 株式会社マルカミ物流 業種:流通・小売・サービス |
採用代行サービス名 | ビズリーチ |
課題・成功事例 | 管理職の業務量増加に伴い1年間で7人の即戦力採用を成功 |
売上増加に伴い管理職ひとりあたりの業務量が過多になっていたことが課題でしたが、ビズリーチの利用により管理職の採用に挑戦。導入から1年で7人の即戦力採用を成功させました。
ハイクラスな人材を求めるのであれば、チェックしてみましょう。
\ハイクラス転職はビズリーチ/
採用ノウハウの蓄積に成功|offers
引用:offers公式HP
会社名(事例提供) | 株式会社TRUSTDOCK 業種:サービス(KYC) |
採用代行サービス名 | offers公式HP |
課題・成功事例 | コンシェルジュが伴走し採用ノウハウを蓄積! |
オンライン面談のみでテックリードクラスの採用を成功させた事例です。
知名度が低いこと、採用ノウハウがないことが悩みでしたが、採用代行サービスの利用で克服。実際にコンシェルジュが採用伴走し完全サポートを行うことで、スキルも経験もマッチした人材を獲得できました。
\本当に欲しい、ハイクラス人材のスピード採用なら/
採用代行サービスのメリットを理解して採用を成功させよう
採用代行サービスは自社の採用業務を削減するだけではなく、採用課題を克服・解決する糸口になります。
本記事で紹介したようにメリットは多いですが、自社に合った採用代行サービスを選ばなければ理想の結果は得られません。本記事で触れたメリットを得るためにも、デメリット・注意すべき点をよく理解してサービスを利用しましょう。