デザイン会社の案件獲得を仕組み化する方法|オンライン・オフライン別に解説

デザイン会社が案件を安定して獲得するには、自社の強みと相性の良い手法を組み合わせることが重要です。「紹介だけでは限界を感じている」「新規営業が属人化している」という悩みは、手法の選び方と優先順位を見直すことで改善できます。

この記事では、デザイン会社が今日から実践できる案件獲得の具体的な手法を、オンライン・オフライン別に整理してご紹介します。自社の規模やリソースに合わせて取り組める内容になっているので、経営者・営業担当者どちらの方にも役立てていただけます。

目次

デザイン会社が案件獲得を仕組み化すべき理由

仕組み化で案件の質と量を制御する

「紹介が途絶えたら売上が止まる」——そんな不安を抱えながら日々の仕事をこなしている経営者・担当者は少なくありません。紹介・口コミ頼みの営業スタイルは関係構築力の賜物である一方、チャネルを自分でコントロールできないという構造的な弱点があります。競合が増え、AI活用で参入障壁も下がった今、案件獲得を「仕組み」として整備することが経営の安定と成長の両方につながります。

仕組み化が必要な3つの理由
  • 口コミ・紹介だけでは売上が安定しないから
  • 競合他社が増加しており受動的な待ちでは埋没するから
  • 案件の質・単価をコントロールできるようになるから

理由①:口コミ・紹介だけでは売上が安定しないから

紹介案件は、発生タイミングが発注企業の予算サイクルや担当者の人脈に左右されます。そのため受注に大きな波が生まれやすく、繁閑の差が収益を直撃します。

特定の紹介元との関係が切れると売上が急減するリスクも見過ごせません。デザイン業は1事業所あたりの規模が小さく、売上変動の影響を受けやすい構造にあります。(出典: 経済産業省「特定サービス産業実態調査 デザイン業」)

口コミ紹介は能動的にコントロールできないチャネルです。そのため成長フェーズへの移行や、新しい顧客層への展開が構造的に難しくなります。

紹介依存の状態では、新規顧客の獲得ペースを自社でコントロールできません。売上を意図的に伸ばしていくには、能動的な獲得チャネルの構築が欠かせません。

理由②:競合他社が増加しており受動的な待ちでは埋没するから

デザイン事業所数は、2016年の8,557社から2021年の9,821社へ約15%増加しています。さらに事業所の77.4%は従業員4人以下の小規模事業者であり、価格競争・差別化競争が激化しやすい市場構造です。(出典: 公益財団法人日本産業デザイン振興会「デザイン白書2024」)

AI・生成AIツールの普及により参入障壁が下がり、フリーランスや副業デザイナーも競合になりうる状況も広がっています。

クライアント側も、今や検索やSNSで能動的に発注先を探す時代です。待ちの営業スタイルでは、そうした比較検討の場面に自社が登場しないリスクが高まります。

「待ち」の営業スタイルが招く主なリスク
  • 競合との比較検討の場面に自社が現れない
  • 価格を軸にした競争に巻き込まれやすい
  • 差別化ポイントを発信できず埋没する

理由③:案件の質・単価をコントロールできるようになるから

仕組み化の最大のメリットは、「受けたい案件を選べる状態」を作れることです。得意な業種や案件タイプに絞った集客ができれば、専門性を武器に単価交渉力が自然と上がります。

インバウンド・アウトバウンド両面の獲得チャネルを持つと、案件が選べる余裕が生まれ、値下げ圧力にも負けにくくなります。またデザインを経営に活用している企業は売上の伸びが平均と比べて32%アップするというデータもあり(InVision “The New Design Frontier”)、デザインの事業貢献を正しく訴求できる会社が高単価案件を引き寄せやすくなっています。

複数の獲得チャネルを持つことは、特定クライアントや特定ジャンルへの依存から脱却する手段でもあります。経営の安定と成長を両立するための基盤として、仕組み化の重要性はますます高まっています。

  • 得意領域に絞った集客で専門性をアピールできる
  • 案件を選べる状態になり値下げ圧力に強くなる
  • 複数チャネルで特定顧客への依存リスクを分散できる

案件獲得に動く前に整えておく3つの準備

営業前に整える3つの土台

営業活動を始める前に、土台が整っていなければ動いても成果にはつながりません。ポートフォリオ・料金体系・提案テンプレートの3つを一体で整備することが、他社との差別化を生む第一歩です。

案件獲得前に整えておく3つの準備
  • ターゲットクライアントの明確化(業種・規模・課題)
  • 強みが伝わるポートフォリオの整備
  • 料金体系と提案テンプレートの設計

準備①:ターゲットクライアントの明確化(業種・規模・課題)

「どんな業種でも対応します」という姿勢は、一見間口が広く見えますが、クライアントには刺さりません。ターゲットを絞らない営業は、誰の記憶にも残らない営業になります。

絞り込む際は、次の3つの軸を使いましょう。

  • 業種(例:飲食・医療・IT SaaS・小売)
  • 企業規模(例:従業員30〜100名の中小企業)
  • 抱えている課題(例:ブランド刷新・採用強化・EC立ち上げ)

なお、デザイン業の売上は東京・大阪・愛知などの都市圏に集中する傾向があります。
(出典: 公益財団法人日本産業デザイン振興会「デザイン白書2024」

地方のデザイン会社であれば、地元企業への特化とリモートでの全国対応のどちらを軸にするかを、まず明確にしましょう。

担当窓口が「社長直」か「マーケ担当」か「広報」かによって、提案内容もヒアリング項目も変わります。ペルソナ設計の段階で窓口まで想定しておくと、商談の精度が上がります。

ターゲット設定で迷ったときは、過去の受注案件を振り返るのが近道です。成約しやすかった業種・規模・課題を洗い出し、そこから逆算してターゲットを絞ると、再現性の高い営業戦略が立てられます。

準備②:強みが伝わるポートフォリオの整備

ポートフォリオに求められるのは、見た目の美しさだけではありません。「課題→プロセス→成果」の3点セットで構成することで、デザインの価値が初めてクライアントに伝わります。

掲載する事例は、ターゲット業種に合ったものを優先してください。飲食業を狙うなら飲食の事例、医療を狙うなら医療の事例を前面に出すことで、専門性の印象を高められます。成果をCVR改善率・売上増加率などの数値で示せる場合は、ぜひクライアントの許可を得たうえで記載しましょう。

フォーマットはWebポートフォリオ(専用サイトまたはBehance等)と、商談で渡せるPDF版の2種類を用意しておくと安心です。

実績がまだ少ない場合は、自社ブランドの架空案件・ボランティア案件・低価格のモニター案件などを活用して事例を積む方法があります。質の高いアウトプットが示せれば、受注実績と遜色ない説得力を持たせられます。

準備③:料金体系と提案テンプレートの設計

料金体系が曖昧なまま商談に臨むと、値引き要求が生じやすくなり、単価が下がる原因になります。事前に料金パッケージを設計しておくことで、交渉の主導権を保てます。

パッケージは3段階で設定するのが一般的です。

プラン内容例
スタータープランロゴ+基本制作物セット
スタンダードプランブランドガイドライン作成含む
プレミアムプラン伴走型リブランディング

見積もりには、調査費・デザイン費・修正費・納品形式の内訳を明記してください。後出しの追加費用はクライアントの信頼を損なう最大の原因です。

提案テンプレートには、次の項目を盛り込んでおきましょう。

  • クライアントの課題整理
  • 提案するデザインのゴール
  • スケジュール
  • 料金
  • 次のアクション(承認ステップ)

テンプレートを汎用化しておくと、受注後の初動スピードが上がります。クライアントへの第一印象にも直結するため、丁寧に整備しておく価値があります。

準備の3点セット:まとめ
  • ターゲットは業種・規模・課題の3軸で絞り込む
  • ポートフォリオは「課題→プロセス→成果」の構成で作る
  • 料金は3段階パッケージ+内訳明示で値引き交渉を防ぐ
  • 提案テンプレートの汎用化で初動スピードと印象を上げる

デザイン会社の主な案件獲得方法

5つの獲得チャネルを使い分ける

案件獲得の手法は大きく2つに分かれます。クライアントから問い合わせが来るインバウンド(引き寄せ型)と、自ら働きかけるアウトバウンド(攻め型)です。

どちらか一方に偏ると、繁忙期と閑散期の波が大きくなりやすい傾向があります。両軸を組み合わせることで、安定した案件パイプラインを構築できます。以下で5つの具体的な手法を解説します。

デザイン会社の主な案件獲得方法 5選
  • アウトバウンド営業(テレアポ・メール・DM)
  • SNS・コンテンツマーケティングによるインバウンド集客
  • ビジネスマッチングサイト・クラウドソーシングの活用
  • 異業種コミュニティ・経営者ネットワークへの参加
  • パートナー企業との協業(Web制作会社・広告代理店との連携)

①アウトバウンド営業(テレアポ・メール・DM)

アウトバウンド営業は、ターゲットに自ら接触して案件を取りに行く手法です。即効性が高い反面、リスト作成と文章の質が成果を大きく左右します。

法律上の注意点もあるため、メール営業は特に慎重に設計することが重要です。なお、テレアポや紙のDMは特定電子メール法の規制対象外ですが、特定商取引法に基づく表示義務は別途確認が必要です。

ターゲットリストの作り方

まずリストの収集先を確保します。主な収集先は以下のとおりです。

  • 業界団体の会員名簿・展示会の出展企業リスト
  • Googleマップ・Googleビジネスプロフィールの検索結果
  • 帝国データバンク(TDB)などの企業データベース(有料プランで詳細情報取得可)

集めたリストはそのまま使わず、従業員規模・売上・サイトのデザイン老朽化の有無などで絞り込みましょう。視覚的に改善余地が見える企業は、アプローチへの反応率が高まる傾向があります。

メール営業でリストを使う場合、相手のホームページに連絡先メールアドレスが公開されている企業への広告・宣伝メールは、特定電子メール法第3条第1項第4号の例外として同意なしに送付できる場合があります。ただし、相手が「広告メールの受信拒否」を表示している場合は送付できません。

既存の取引関係がない相手への広告メールは、原則として事前の同意(オプトイン)が必要です。オプトインを取得して配信する場合は、同意の記録を保存する義務があります(総務省ガイドライン)。
(出典: 総務省「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」

違反した場合の罰則
  • 個人は拘禁刑または100万円以下の罰金
  • 法人は3,000万円以下の罰金

反応率を上げる営業文の構成

件名には相手の社名や具体的な状況を入れ、一斉送信の印象を消すことが基本です。本文は以下の順で構成すると伝わりやすくなります。

  • 共感:相手の課題・状況への具体的な言及
  • 自己紹介:実績を1〜2行で簡潔に
  • 提案:相手が得られる具体的なメリット
  • CTA:返信依頼またはポートフォリオURLの案内

「御社の〇〇ページを拝見しました」のように個別調査の痕跡を入れると、相手は「自分に向けて書かれた文章だ」と感じやすくなります。テンプレートに少し手を加えるだけで反応が変わるため、手間を惜しまないことが重要です。

②SNS・コンテンツマーケティングによるインバウンド集客

SNSやブログは、問い合わせが自然に集まる仕組みを育てられる手法です。即効性は低いものの、一度構築すると営業コストを抑えながら継続的な露出を確保できます。

X(旧Twitter)・InstagramなどSNSの活用法

SNSはプラットフォームごとに強みが異なります。目的と得意な表現形式に合わせて使い分けましょう。

SNS強み向いているコンテンツ
X(旧Twitter)思考・プロセスの発信。業界内認知と採用にも効果的制作の裏側・デザイン判断の理由・トレンドコメント
Instagramビジュアル訴求。グラフィック・パッケージ等の成果物公開に最適ビフォーアフター・リール動画・フィード投稿
LinkedInBtoB企業・スタートアップ・外資系へのアプローチに有効実績紹介・専門知識の発信・英語圏クライアント獲得

フォロワー数を増やすだけでなく、見込みクライアントへのDMやコメントで関係を構築するウォームアウトバウンドも組み合わせると、成約につながりやすくなります。

オウンドメディア・ブログでの専門性の発信

ブログやオウンドメディアは長期的な資産になります。クライアントが実際に検索するキーワードで記事を書くことで、SEO経由の問い合わせを安定的に獲得できます。

狙いやすいキーワードの例としては「〔業種〕 デザイン会社」「ロゴ制作 費用 相場」「ブランディング 中小企業」などが挙げられます。記事コンテンツとしては、業種別の制作事例・プロセス紹介・よくある失敗と解決策などが読まれやすい傾向があります。

Note・Zennなどの外部プラットフォームも活用すると、被リンク獲得と認知拡大の両方を狙えます。ただし、成果が出るまでの目安は3〜6カ月以上かかることが多く、中長期の施策として位置づけておくことが重要です。

③ビジネスマッチングサイト・クラウドソーシングの活用

クラウドソーシングは、実績が少ない段階のポートフォリオ構築・初期案件獲得に向いています。主要サービスとしてはクラウドワークス・ランサーズ・ココナラなどが挙げられます。

デザイン系の案件(バナー・ロゴ・Webデザインなど)は豊富に掲載されている一方、プラットフォームへの手数料が差し引かれ、低単価案件が多いという特徴があります。高単価案件を狙う場合は、プレミアムプランの利用や認定ランクの獲得が有効です。

月額制ビジネスマッチングサービスの相場は月1万〜2万円程度、紹介手数料型は1案件あたり5,000〜2万円程度が目安です。コンペ形式は採用されなければ報酬ゼロのため、消耗を避けるには受注確度の高いプロジェクト形式・指名案件の獲得を目標にすることをおすすめします。

ランサーズの「スキルパッケージ」やココナラのサービス出品形式は、定額化・商品化できる業務(例:ロゴ制作・バナー制作)との相性が良く、問い合わせ対応の手間を減らせます。

④異業種コミュニティ・経営者ネットワークへの参加

異業種交流会や経営者勉強会への参加は、デザイン会社と普段接点が少ない業種の経営者と直接出会える機会です。特に地方のデザイン会社にとっては、商工会・商工会議所のビジネスマッチング事業(一部無料)が取り組みやすい選択肢です。

BNI(Business Network International)のような紹介型ネットワーキング団体への参加も選択肢のひとつです。参加費や国内拠点数は公式サイトでご確認ください。

参加時は「デザイン会社です」と業種だけを名乗るのではなく、「採用資料のデザインで応募数を改善するデザイン会社です」のように課題解決型の自己紹介にすると記憶に残りやすくなります。交流後はSNS接続・メール送付・情報提供などのフォローアップを継続して関係を温めましょう。

⑤パートナー企業との協業(Web制作会社・広告代理店との連携)

Web制作会社・広告代理店・印刷会社・コンサルティング会社は、デザインを外注するニーズを持つ典型的なパートナー候補です。パートナー経由の案件は商談が進んだ状態で受注できる場合が多く、営業コストを大幅に抑えられます。

協業スキームの主な型は以下の3つです。

  • フロー型:都度紹介で案件を融通し合う
  • パッケージ型:相手のサービスにデザインを組み込んで販売
  • ジョイントベンチャー型:共同受注・共同提案

自社でできない領域(システム開発・動画制作・マーケティング戦略など)を持つ会社と相互送客の仕組みを作ると、双方にメリットが生まれます。

パートナー契約を結ぶ際は、紹介料の取り決め・守秘義務・品質基準をぜひ明文化しましょう。特定商取引法・下請法の適用有無は契約内容によって異なるため、締結前に専門家への確認をおすすめします。

案件獲得方法:手法ごとの特徴まとめ
  • 即効性ならアウトバウンドやクラウドソーシング
  • 中長期の安定獲得には:SNS・ブログのコンテンツマーケティング
  • 低コストで質の高い案件を狙うなら:パートナー協業・経営者ネットワーク
  • メール営業は特定電子メール法の規定を事前に確認する

案件獲得チャネルの選び方:自社の状況別ロードマップ

フェーズ別に取り組むチャネルが違う

「どの手法が自社に合うのか」という問いに、一律の正解はありません。クラウドソーシングが最適な時期もあれば、パートナー営業を優先すべき時期もあります。

ここでは創業期・成長期・拡大期の3フェーズに分けて、今取り組むべきチャネルを整理します。まず自社の現在地を確認してから読み進めてください。

創業・実績ゼロ期にまず取り組むべきチャネル

実績がない段階では、スキルを証明できる材料がないため、アウトバウンド営業や高単価の直接受注はほぼ機能しません。まずは実績・評価・ポートフォリオの3点セットを揃えることが最優先です。

最初の一手として有効なのが、クラウドワークスやランサーズといったクラウドソーシングです。実績ゼロでも案件に応募でき、受注のたびに評価が積み上がります。複数の情報源が「最初のステップ」として共通して推奨している手法です。

並行して、InstagramやXでデザイン事例の発信を始めましょう。知人・前職・学校のOBへの告知も見落としがちですが効果的です。モニター価格と引き換えにポートフォリオ掲載の許可をもらうと、初期の実績づくりがスムーズに進みます。

公益財団法人日本産業デザイン振興会の「デザイン白書2024」によると、デザイン業事業所の売上高規模は「1千万円未満」が最多(36.7%)。初期は売上より実績構築を優先する割り切りが重要です。(出典: 公益財団法人日本産業デザイン振興会「デザイン白書2024」

創業期のゴール
  • プロジェクト形式の受注実績を3〜5件つくる
  • 業種別にポートフォリオを整備する
  • SNSでデザイン事例の発信を習慣化する

実績が数件ある成長期に優先すべきチャネル

受注実績が3〜5件ほど揃ったら、チャネルを広げる段階に入ります。まずポートフォリオサイトを整備し、SEOやコンテンツマーケティングを「中長期の仕込み」として動かし始めましょう。すぐには成果が出ませんが、早く着手するほど後で効いてきます。

リアルな場での接点づくりも重要です。異業種交流会や商工会議所への参加は、見込みクライアントと直接話せる機会として有効です。

並行して、Web制作会社・広告代理店へのパートナー営業を開始するのもこの時期です。実績資料とパートナーシップ提案書を用意した上でアプローチすると、話が進みやすくなります。メール営業(アウトバウンド)でターゲットに個別接触する場合は、特定電子メール法を遵守した運用が必要です。

成長期のゴール
  • 月間問い合わせ数を安定させる
  • 月の売上がある程度予測できる状態にする

安定受注を目指す拡大期に組み合わせるべきチャネル

拡大期のテーマは「アウトバウンド依存からの脱却」です。SEO・SNS・オウンドメディアからのインバウンド(問い合わせが自然に来る状態)を安定化させ、営業コストを下げながら案件を増やします。

パートナー企業との協業スキームを継続的に構築し、間接営業チャネルとして機能させることも重要です。また、既存クライアントへのアップセルや継続契約を仕組み化してLTV(顧客生涯価値)を最大化することで、新規開拓の負担を減らせます。

採用や外部パートナーの活用で対応キャパシティを広げ、単価の高い案件に集中できる体制を整えましょう。チャネル別の問い合わせ件数・成約率・単価をKPIとして計測し、PDCAを回すことが、この段階では特に重要になります。

  • インバウンド問い合わせの安定化でアウトバウンド依存を低減
  • パートナー経由の間接営業チャネルを確立
  • 既存クライアントの継続・アップセルでLTV最大化
  • KPI計測でチャネルごとのPDCAを継続

成約率を上げる提案・営業活動のコツ

ヒアリングから成約までの4ステップ

「営業手法は知っている。でも、なかなか成約につながらない」——そんな悩みを抱えているデザイン会社や担当者は多いはずです。

デザイン会社の営業には特有の難しさがあります。デザインの価値を「ビジネスの成果」として言語化することが、他業種より格段に難しいからです。まずその難しさを認めたうえで、成約率を高める4つのコツを順に解説します。

成約率を上げる4つのコツ
  • ヒアリングでクライアントの本質的な課題を引き出す
  • デザインの価値をビジネス成果に結びつけて提案する
  • 見積もり提示前に予算感をすり合わせる
  • 断られた後のフォローアップで関係を維持する

コツ①:ヒアリングでクライアントの本質的な課題を引き出す

クライアントが最初に口にする「困りごと」は、多くの場合、表面的な症状にすぎません。「チラシを作りたい」という依頼の本質は「新規顧客が来ていない」という課題である、というケースはよくあります。

話すのは2割、聞くのは8割を意識することが、信頼関係構築の基本です。「なぜ?」を5回繰り返す「5Why」の考え方をベースに、表面の要望から根本課題へと深掘りしていきましょう。

ヒアリングで押さえておきたい項目は以下のとおりです。

  • 現状のKPI(集客数・売上・認知度など)
  • 現在の施策と感じている課題
  • 理想としている状態・ゴール
  • 過去に試したこと・うまくいかなかったこと
  • 意思決定者と投資可能な予算感

ヒアリングシートを事前に作成してクライアントに共有しておくと、商談当日の準備が整い、議論の質が格段に上がります。「聞く」という行為そのものが、提案への受け入れ態勢をつくります。

コツ②:デザインの価値をビジネス成果に結びつけて提案する

「きれいなデザインを作ります」という提案では、クライアントの決裁者を動かせません。「○○の課題を解決するためにデザインを使います」という言語に変えることが、成約率を左右します。

たとえば採用ページのリデザインなら「応募数の改善」、ECサイトのUI改善なら「CVR(コンバージョン率)の向上」という具体的な成果指標と紐づけて話します。提案書には仕上がりイメージだけでなく、「完成後にどのビジネス指標がどう改善するか」のシナリオをぜひ盛り込みましょう。

競合他社との差別化も、デザインの品質だけで語るのは危険です。「伴走支援」や「成果へのコミット」という軸で示すと、価格競争から抜け出しやすくなります。

デザインを経営に活用している企業では売上の伸びが平均比で大きく上回るという調査結果もあります。このようなデータを引用することで、デザイン投資の意義をデータで裏付ける説明が可能になります。

コツ③:見積もり提示前に予算感をすり合わせる

いきなり見積書を提示すると、内容よりも「高いか安いか」の印象で判断されてしまいます。見積もりを出す前に、まず予算感をヒアリングすることが重要です。

切り出し方の例としては、「今回のプロジェクトに対して、おおよそどのくらいの投資をご検討でしょうか?」という一言が自然です。この質問は「値引きを求めている」ではなく、「スコープ(対応範囲)を合わせたい」という文脈で話を進めましょう。

予算が少ない場合も、即座に断る必要はありません。フェーズ分けや優先度の高い部分から着手するスモールスタートの提案で関係を開始できます。口頭でのすり合わせ後はぜひ書面で内容を確認することで、後からのトラブルを防げます。

コツ④:断られた後のフォローアップで関係を維持する

「今回は見送り」という返答は、多くの場合タイミングの問題です。断られても関係を切らないことが、長期的な受注につながります。

まず見送りの理由をヒアリングしましょう。「予算がない」「他社に決めた」「時期を改めたい」では、次回のアプローチ方法がまったく異なります。理由を把握してこそ、次の提案を改善できます。

フォローアップの具体的な行動は以下のとおりです。

  • 3カ月後に「以前ご提案した件でその後いかがでしょうか」とメールを送る
  • 自社事例や役立つコンテンツを定期的に共有して接点を保つ
  • CRMやスプレッドシートでフォローアップ日程を管理してタスク漏れを防ぐ

断った担当者が転職・昇進して新たな発注者になるケースもあります。長期的な関係値の積み重ねが、将来の受注に直結することを忘れないでください。

成約率を上げる提案活動のまとめ
  • ヒアリングは「表面の要望」でなく「根本課題」の深掘りを優先する
  • 提案はデザインの美しさでなく、ビジネス成果との紐づけで語る
  • 見積もり前に予算感をすり合わせ、スコープ調整で折り合いをつける
  • 断られた後もフォローを継続し、長期的な関係を維持する

リピート・紹介を生み出してデザイン案件を安定させる方法

新規開拓には、既存顧客からの継続・紹介と比べて大幅なコストがかかります。一般的に、新規顧客の獲得コストはリピートや紹介の数倍に上るとも言われており、LTV(顧客生涯価値)を高める施策こそが売上安定の核心です。

案件を単発で終わらせず、継続・紹介へとつなげる仕組みを整えることが、デザイン会社の持続的な成長を支えます。

リピート・紹介を生み出す3つの方法
  • 納品後のアフターフォローで継続関係を作る
  • 成果の数字を可視化してアップセルにつなげる
  • 紹介が生まれやすい関係値を育てる

方法①:納品後のアフターフォローで継続関係を作る

納品して終わりにするのは機会損失です。「1カ月後の効果確認」や「3カ月後の振り返りミーティング」をあらかじめ提案しておくだけで、クライアントとの接点を自然に持ち続けられます。

具体的なフォローの例としては、Webデザイン納品後にアクセス解析データを共有して改善提案する、ロゴ制作後にブランドガイドラインの使用状況をヒアリングするといった方法があります。定期的な接触が「何かあれば相談しよう」という想起を生み、次の案件への自然な窓口となります。

ニュースレターや定期メールで業界トレンド・デザインTipsを届けるのも関係維持に効果的です。「クライアントの成功に伴走する姿勢」を体感してもらうことが、他社への乗り換えを防ぐ最大の防衛策になります。

振り返りミーティングは1回30分程度の短い設定でも効果的です。「会いに来てくれる会社」という印象が信頼の積み重ねにつながります。

方法②:クライアントの成果を数字で可視化して次の提案につなげる

成果を数字で見せることは、クライアントの満足度を高めると同時に、次の提案への布石になります。Webリニューアル後のCV数・セッション数の変化、採用ページ改修後の応募数推移などをレポートにまとめて共有しましょう。

成果が出た直後が、次の提案を切り出す最良のタイミングです。クライアントの満足度が最高潮のその瞬間に、課題→解決策の流れで自然に提案します。

アップセル・クロスセルの切り出し例を以下にまとめます。

  • 「問い合わせ数が増えていますね。採用ページも同じテイストで統一しませんか?」(アップセル)
  • ロゴ納品後に名刺・パンフレット・Webバナーの制作を追加提案(クロスセル)
  • 月額定額のリテイナー契約(月額顧問型)を提案し、継続的なデザインサポートを提供

リテイナー契約は月数万円程度からの設定が多く、単発案件に比べて収益が安定しやすいのが大きな魅力です。相場は業務内容によって異なるため、個別にすり合わせて設定することをおすすめします。

方法③:紹介が生まれやすい関係値の育て方

紹介は「お願いして得るもの」ではなく、「自然と起きる状態を作るもの」です。そのためには3つの条件が揃っている必要があります。

  • クライアントがデザインの成果に満足している
  • クライアントが自社のサービス内容を他者に説明できる
  • 「あなたを紹介したい」と感じる信頼関係がある

条件が整ったら、紹介を促す仕掛けを加えます。案件完了時に「もしお知り合いでお困りの方がいればご紹介いただけると助かります」と明示的に伝えるだけでも、紹介が生まれる確率は大きく変わります。紹介インセンティブ(優先対応・御礼など)を設けることも有効です。

また、紹介カードや自社サービス紹介資料をクライアントに手渡しておくと、紹介しやすい状態を整えられます。経営者・マーケ担当者のコミュニティで存在感を高め、「デザインといえばこの会社」というポジションを築くことも、長期的な紹介獲得の土台になります。

リピート・紹介を増やすための要点まとめ
  • 納品後の定期フォローで「相談される存在」になる
  • 成果を数字で共有し、満足度が高い瞬間に次の提案を行う
  • 紹介カード・サービス資料を渡して紹介しやすい環境を整える
  • リテイナー契約で安定収益の基盤を作る

よくある質問

Qデザイン会社が案件獲得で最初にやるべきことは何ですか?

Aターゲットクライアントの明確化・ポートフォリオの整備・料金体系の設定という準備3点セットを先に整えることが最優先です。

土台のない状態で営業活動を始めても、商談まで進んでも成約につながりにくいのが現実です。まず「誰に・何を・いくらで」を言語化しましょう。

準備が整ったら、クラウドソーシングや知人紹介を使って最初の受注実績を作るのが現実的な第一歩です。

Q実績がない状態でも新規クライアントを獲得できますか?

A実績ゼロでも獲得は可能です。クラウドワークスやランサーズには「初心者歓迎」「未経験OK」の案件が多く、実績なしでも受注できる環境が整っています。

コンペ形式で採用されればポートフォリオに使える実績を作れるほか、モニター価格での受注や知人・前職企業へのボランティア制作も有効な手段です。

実績を積んだあとは、多くの場合クライアントの許可を得てからポートフォリオに掲載するようにしましょう。無断掲載はトラブルの原因になります。

Qテレアポとメール営業はどちらが効果的ですか?

A目的・ターゲット・自社リソースによって異なるため、どちらが優れているとは一概に言えません。

テレアポは即日反応が得られる反面、担当者不在や門前払いが多く時間効率がかかります。中小企業や地域密着型の開拓では有効なケースもあります。メール営業はスケールしやすく、文面を改善することで成果を高めやすいのが強みです。

ただしメール営業には注意点があります。特定電子メール法のオプトイン規制・表示義務を遵守する必要があり、受信拒否の意思表示があるアドレスへの送付は禁止されています。
(出典: 総務省「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」

初期は両方を試して返信率・商談化率などのKPIを比較し、自社に合う方法を見極めていくのがおすすめです。

Qビジネスマッチングサイトは費用対効果が合いますか?

A案件単価と手数料・月額費用のバランスで判断する必要があります。月額制サービスの相場は月1万〜2万円程度、紹介手数料型は1案件あたり5,000〜2万円程度が目安です。

クラウドソーシングは受注ごとにプラットフォーム手数料が差し引かれる仕組みです。手数料率はサービスにより異なるため、各社の公式サイトでぜひ確認してください。

数十万円以上の高単価案件を狙う場合はマッチングコストが相対的に小さくなり、費用対効果が合いやすくなります。低単価案件が多いクラウドソーシングは実績構築フェーズに活用し、成長後は直接営業やパートナー経由に移行するのがセオリーです。

Q既存クライアントへの追加提案(アップセル)はどう切り出せばいいですか?

A成果の可視化タイミングに合わせて、「課題→解決策」の流れで提案するのが鉄則です。

「他にご依頼はありますか?」と受け身で聞くのはNGです。「今回の施策でCV数が○件増えましたね。同じ戦略で採用ページも刷新すると、さらに効果が見込めます」のように、具体的な成果と次の課題を接続して提案しましょう。

提案のタイミングは、納品直後の満足度が高い時点・効果検証レポートを共有した直後・クライアントの新しい経営課題が見えた時が特に有効です。いきなり大型案件を持ちかけるより、追加制作→保守契約→顧問契約と段階的にステップアップするほうがクライアントの心理的ハードルが低くなります。

まとめ:デザイン会社の案件獲得はチャネルの組み合わせと継続が鍵

ここまで、デザイン会社が案件を安定的に獲得するための手法を幅広くご紹介してきました。最後に、記事全体の要点を整理しておきます。

大切なのは「待ちの営業」から脱却し、仕組みとして案件が入ってくる状態をつくることです。どれか1つの手法に頼るのではなく、チャネルを組み合わせて継続することが、売上安定と単価向上への最短ルートです。

この記事の要点まとめ
  • 「待ち」から「仕組み」へ転換することが売上安定・単価向上の鍵
  • インバウンドとアウトバウンドの両軸でリスクを分散する
  • フェーズ(創業期→成長期→拡大期)に応じて戦略をシフトする
  • 成約率を上げるには、ヒアリング力とビジネス成果への言語化力が重要
  • 既存クライアントのLTV向上も、売上安定の核心として取り組む

フェーズごとに戦略をシフトする

創業期はまず実績をつくることが優先です。クラウドソーシングや知人紹介でポートフォリオを充実させましょう。

実績が積み上がってきた成長期には、パートナー営業やコンテンツマーケティングへシフトし、紹介・指名での問い合わせを増やしていきます。拡大期では、リピートと紹介を仕組み化して、営業コストをかけずに受注できる体制を整えることが目標です。

LTV(顧客生涯価値)を高めるには、納品後のアフターフォロー・アップセル・紹介促進をセットで設計することが効果的です。

今日から始める3つのアクション

「何から手をつければいいかわからない」という方は、まず以下の3点から着手してみてください。手法を増やすより、1つを継続する方が成果につながります。

  • ターゲット(業種・規模・課題)を言語化して明確にする
  • 既存の制作物でポートフォリオを整備する
  • 1つのチャネルに絞って3ヶ月間継続する

「デザインの価値をビジネス成果として伝える言語化力」は、営業・提案・ポートフォリオのすべてに活きます。まずはこの視点でセルフチェックしてみましょう。

案件獲得の戦略をさらに体系的に学びたい方は、以下の関連記事もあわせてご覧ください。

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