ダイレクトリクルーティングなど攻めの採用手法を注目されている昨今。「本当に利用するメリットはあるのか」と疑問に思う企業は少なくありません。
そこで本記事では、ダイレクトリクルーティングを行うメリット・デメリットを紹介します。
他の採用手法7種類との比較もしたので、自社に最適な採用手法は何かを考える参考にしていただけると幸いです。
慶應義塾大学卒業後、株式会社リクルートキャリアにて累計100社以上の採用コンサルティングに従事。現在はサクルートにて様々な企業のダイレクトリクルーティングを支援。
ダイレクトリクルーティングの特徴
ダイレクトリクルーティングとその他の採用方法の特徴について触れて行きます。
企業側から人材へ直接アプローチができる「攻めの採用」
ダイレクトリクルーティングは、企業が人材個人に直接アプローチする手法です。企業が求人広告を掲載し人材の応募を待つ従来の「待ちの採用」とは異なり、人材個人に企業からアプローチする「攻めの採用」に分類されます。
SNSなどから直接個人へアプローチする方法もありますが、主流ではありません。人材データベースを保有する企業と提携し、採用を進めるのが基本です。
人材プールの中から自社に適合する人材をスクリーニングし、フィットする人材に企業が直接メッセージを送り面接フェーズへと進みます。
売り手市場の現在、自社にフィットする人材に直接モーションをかけられるダイレクトリクルーティングは多くの企業が注目しています。
他採用方法との違い
ダイレクトリクルーティング | オウンドメディアリクルーティング | 求人媒体 | 人材紹介 | |
---|---|---|---|---|
採用のタイプ | 攻め | 攻め | 待ち | 待ち |
母集団形成の質 | ◎ | ◎ | × | 〇 |
母集団形成のしやすさ | 〇 | △ | 〇 | △ |
費用コスト | 〇 | 〇 | △ | × |
工数コスト | △ | × | △ | ◎ |
ダイレクトリクルーティングは自社からアクションを起こす必要があるため、待ちの採用と比べて工数は多くなる傾向にあります。しかし攻めの採用の中では、工数は少ない部類です。
攻めの採用と待ちの採用の種類と、それぞれの具体的な違いについて見ていきましょう。
攻めの採用
ダイレクトリクルーティング | 企業が直接人材へアプローチする方法全般を指す |
オウンドメディアリクルーティング | 自社で保有しているメディア(オウンドメディア)での発信を強化し自社が求める人材の採用を行う |
SNS採用 | X、Instagram、Facebookなどで発信を強化したりスカウトを行ったりして人材の採用を行う |
ヘッドハンティング | 既に企業に勤めている優秀な人材を自社に引き抜く |
リファラル採用 | 自社の従業員など信頼できる人から人材を紹介してもらう |
ダイレクトリクルーティングは企業が直接人材にスカウトメールなどを送信し、個人でやり取りを行います。
オウンドメディアリクルーティングやSNS採用などは、不特定多数への発信の強化が必要不可欠です。そのため、ダイレクトリクルーティングよりも工数は多くなる傾向にあります。
また、発信の内容は自社が求める人材像に刺さるものでなければ効果は薄いため、PDCAサイクルを回し改善していく必要性もあります。工数は多いですが、発信の内容次第で母集団の高い質が期待できるのが魅力です。
リファラル採用は、自社の従業員など信頼できる人から人材を紹介してもらうため最初から信頼性はある程度担保されているのが魅力。しかし紹介者の認識不足や紹介者と候補者の関係性に気を遣うなど、別の側面で配慮が必要です。
待ちの採用
求人媒体 | 企業が求人媒体に自社の情報を掲載し、閲覧した人からの応募を待つ |
ハローワーク | 公共の就職支援機関(厚生労働省が管轄)に求人を掲載し、応募を待つ |
人材紹介 | 人材紹介事業者と契約を提携し、求める人材像を共有し紹介を待つ |
待ちの採用はダイレクトリクルーティングなど攻めの採用と比べると、母集団形成から面接前までの工数は削減できます。しかし自社に応募者が多いのにフィットする人材がいない場合は、面接から採用までの工数は増えるでしょう。
求人媒体やハローワークは、求人情報を掲載して応募を待つ手法です。ハローワークに掲載し採用に繋げることで、国から助成金がもらえる制度もあります。
人材紹介は、人材紹介事業者と契約を結び、求める人材像を共有して、求める人材がいた際に紹介してもらえる採用方法です。自社にマッチする人材を紹介してもらえるため工数は少なく済みますが、人材紹介会社の能力により採用の質が左右されるのが難点でしょう。
ダイレクトリクルーティングのメリット
数ある採用手法の中でダイレクトリクルーティングを利用するメリットを、4つ紹介します。
自社が求める人材に直接アプローチができる
ダイレクトリクルーティングを行う最大のメリットは、自社が求める人材像にフィットした求職者と出会えるところにあります。
自社が求める優秀な人材と直接やり取りをすることで、待ちの採用よりも密な関係を築けます。企業と人材のミスマッチを防げるため、即戦力として現場で働いてもらうことはもちろん、離職率の低下も期待できるでしょう。
自社が気になる人材に直接アピールし、実際に会うことで、母集団形成の質が格段に上がります。
採用コストを抑えられる可能性がある
攻めの採用では、自社が気になった人材のみにアプローチするため採用コストを抑えられる可能性が高いです。
従来の待ちの採用では、自社が求めていない人材からの応募が多数ありました。書類選考、一次面接、二次面接、最終面接など、面接の工数が多く苦労する企業も少なくありません。被面接者に対する交通費の支給など、コストがかさみます。
費用以外にも、採用担当者の業務もかさむでしょう。
ダイレクトリクルーティングを導入することで、ふるいにかける作業がなくなり、コア業務に集中できます。
転職潜在層へのアプローチが可能となり母集団形成に役立つ
攻めの採用であるダイレクトリクルーティングは、人材データベースを保有する事業者と提携を組み採用を進めることが基本です。多くの場合、転職顕在層はもちろん、転職潜在層もデータベースに登録しています。
つまり転職潜在層の優秀な人材にもアプローチをかけられるため、出会いの幅が広がり、ひいては母集団形成に大いに役立ちます。
待ちの採用では転職顕在層のみへのアプローチが基本だったことを考えると、ひと味違った出会いに恵まれるでしょう。
また認知度が低い企業は、大企業や有名企業と比べると待ちの採用での人材が集まりにくいです。認知度が低い企業こそダイレクトリクルーティングを利用することで、質の高い採用が可能となります。
ノウハウの蓄積により自社の採用の質を高められる
ダイレクトリクルーティングを成功させるためには、従来の待ちの採用とは全く違うノウハウが必要です。
そのためにダイレクトリクルーティングに精通した、採用支援サービスを一時的に利用する企業は少なくありません。ダイレクトリクルーティングのノウハウを自社に蓄積し、自社の攻めの採用の質を高めましょう。
自社の採用の質を高めることで、今後の費用的採用コストを削減できます。
最初はコストをかけて手厚いダイレクトリクルーティングサービスを使用し、最終的には人材ベースのみの利用にとどめられると、大幅なコスト削減が期待できるでしょう。またこれらのテクニックは、SNS採用などにも汎用的に使えます。
ダイレクトリクルーティングのデメリットと対策方法
ダイレクトリクルーティングにはデメリットもあります。
多くの企業が注目している採用方法ではありますが、必ずしも自社に最適であるとは限りません。どのような不都合があるのか、詳細を見ていきましょう。
ダイレクトリクルーティングのフロー確立まで時間がかかる
ダイレクトリクルーティングなどの攻めの採用手法は、従来の採用手法と大きな差があります。フロー確立まで時間がかかる点については、留意する必要があります。
従来の採用手法は、多くの応募者の中から必要とする人数の採用者を出す方法でした。多くの応募者をふるいにかける作業がある分、アプローチなどの工数は必要ありません。つまり質が低い大きい母集団から採用者を選出します。
ダイレクトリクルーティングなどの攻めの採用手法は、自らが選ぶ少ない人材にアプローチをかけて採用者を出す方法です。少ない人材と密にやり取りをする必要がある分、多くの応募者をふるいにかける作業は必要ありません。
質が高い小さい母集団から採用者を選出する全く逆の手法であるため、フロー確立まで採用担当者に負荷がかかります。
対策
ダイレクトリクルーティングの支援サービスを利用することで、採用担当者の業務負荷を軽減できます。
費用コストはかかりますが、採用担当者の残業代、離職のリスク、新たな採用担当者の雇用などのコストの心配は少なくなるでしょう。各サービスを利用した場合の費用対効果を考え、サービス導入も検討することがおすすめです。
最終的には人材データベースのみの利用にとどめられるのが、理想といえるでしょう。
長期的な視点で取り組む必要がある
ダイレクトリクルーティングは現職がある人材に対してアプローチを行うため、長期的にやり取りをして自社のアピールをする必要があります。現職よりも自社の仕事に興味を持ってもらえなければ、優秀な人材の採用はできません。
転職意欲の低い転職希望者に対してカビュアル面談を実施するなど、新たな取り組みを導入していく必要があります。
対策
短期でのダイレクトリクルーティングを希望する場合は、転職顕在層が多い人材データベースを保有する事業者と提携することで時間短縮効果が期待できます。またスカウトメールの内容を魅力的にしたり、配信時間を考えたりと、自社に魅力を持ってもらえる工夫をすることも有効です。
採用担当者個人の採用力が顕著に表れやすい
ダイレクトリクルーティングサービスは、自社に最適な人材を見つける力が必要不可欠です。
実際に候補者とやり取りを行うため、ビジネスマナーや一般常識はもちろん、候補者に「入りたい」と思わせるコミュニケーション能力、配慮する能力などあらゆる力が必要でしょう。そのため採用担当者個人の採用力が、顕著に表れます。
従来の応募を待ちその中から採用者を選出する方法では必要なかった、多くの能力が必要です。
対策
信頼できる採用担当者に業務を任せること、ダイレクトリクルーティング支援サービスを利用し採用担当者に知識をつけること、時間をかけてフローを確立することがあげられます。
採用担当のチームで密に話し合いを行い、PDCAサイクルを回していくことも重要です。
人材を配置する現場と密に協力する必要がある
人材を配置する現場と密に協力する必要があります。現場をよく理解する従業員と、理想の人材像について擦り合わせましょう。現場と人事の理想を擦り合わせることで、より自社にマッチした人材の採用ができます。
また現場をよく理解する従業員を、カジュアル面談や面接に同席させるのも有効です。
特にエンジニアや研究者などの高い専門知識を必要とする職は、現場の従業員を同席させることがおすすめ。人事だけでは答えられない、細かい部分のすり合わせを求職者とできます。
対策
人材を配置する現場と人事の溝がある場合は、早急に埋めておく必要があります。密に連絡を取り合い、お互いが納得できるポイントを探していくことが成功の秘訣です。
また売り手市場の昨今、ダイレクトリクルーティングでスカウトする優秀な人材は他社からアピールされているケースも少なくありません。候補者は辞めても次の仕事が見つかりやすいため、すり合わせしなければ離職率の上昇に繋がります。
ダイレクトリクルーティングの採用が向いている企業
向いている企業 | 向いていない企業 | |
---|---|---|
業種やジャンル | ・IT系、WEB系 ・ベンチャーやスタートアップ | ・介護・保育業界など ※そもそも登録人材が少ない |
職種・ポジション | ・専門性の高い職種を募集する企業 └エンジニア、AI技術者、データサイエンティスト ・経営者層など | ・専門性が低い職種を募集する企業 ・人手不足ではない業種やポジションを探す企業 |
採用人数 | ・採用人数が少ない企業 | ・大量採用を目論む企業 |
ダイレクトリクルーティングが向いていない業種は特にありませんが、強いていうのであれば介護や保育業界は向いていないといえます。なぜならそもそも登録している転職希望の人材が少ないためです。
人材データベースを確認し、自社が求める業種や人材に強いか否かをよく確認する必要があります。逆にいえば、そういったジャンルに強いサービスが今後出てきた場合はダイレクトリクルーティングもしやすくなるでしょう。
ダイレクトリクルーティングを成功させるコツ
ダイレクトリクルーティングを成功させるコツを、5つ紹介します。
現場と協力し採用要件と求める人材のギャップの差を埋める
現場と協力し採用要件や求める人物像を練り、現場と人事の理想のギャップを埋めることがダイレクトリクルーティングを行う上で重要です。現場と人事が密に連絡を取りすり合わせを行うことで、企業と人材のミスマッチを防げます。
またカジュアル面談や面接に現場の人を同席させることで、よりマッチ度の高い人材の採用に繋がるでしょう。
採用要件の優先順位にこだわる
採用要件は細かく決めるにこしたことはありませんが、条件が多すぎるとマッチする人材がそもそも見つかりません。あらかじめ優先順位をこだわって決めておくことで、より自社にマッチした人材の採用に繋がります。
優先順位に関しても、現場とよく話し合い密に擦り合わせることがおすすめです。
自社の魅力をアピールし人材の興味を惹く
自社の魅力をアピールし、特別感を演出し人材の興味を惹くことで採用に繋がりやすくなります。
会社の魅力は数多くありますが、どの魅力が1番自社が想定する人物像に刺さるのかを考えることが重要です。より魅力的なスカウトメールや企業紹介文章を作成することで、「入りたい」と思ってくれる人材が増えるでしょう。
またカジュアルかつ、非公開の面談やイベントに招待することで特別感を演出できます。特別感の演出は、採用意欲を高めるうえで重要であるため、社内でよく検討してください。
スカウトメールの内容や送信時間を考える
候補者とのファーストコンタクトであるスカウトメールの内容や送信時間を工夫することで、成功率が高まります。
スカウトメールやメッセージのやり取りの詳しい手法については、以下の記事で詳しく解説しています。スカウトメールの開封率や返信率を上げる手立てを詳しくまとめました。
実際にまだダイレクトリクルーティングを検討していない企業様でも、ダイレクトリクルーティング業務の大まかなイメージを掴める内容となっています。
予算を決めて費用対効果を考えた後にサービスを利用する
攻めの採用のノウハウがない場合は、ダイレクトリクルーティングの支援サービスを利用することをおすすめします。最初はコストが高くなるかもしれませんが、長期的な視点で見るとメリットが多いと考えるためです。
ダイレクトリクルーティング支援サービスを利用する際は、運用コストや導入コストなどの予算を決め、各サービスの費用対効果を社内で検討しましょう。自社に合ったサービスを利用することで、ダイレクトリクルーティングの成功率をグンと上げられます。
ダイレクトリクルーティング&スカウト代行のおすすめサービス
ダイレクトリクルーティングサービスを提供している31社の比較を、以下の記事でしています。
支援サービスの利用を検討している企業様はもちろんのこと、採用支援サービスの相場、どのような特徴のサービスがあるのかを把握したい企業様もぜひ一度ご覧ください。
ダイレクトリクルーティングのメリットを最大限活かした採用活動を
ダイレクトリクルーティングのメリットを紹介してきました。ダイレクトリクルーティングのメリットを最大限活用することで、より採用の成功率を高められるでしょう。
本記事で紹介した内容を参考にしていただけると幸いです。